第3話
地元の進学校で3年間バラ色の高校生活を謳歌した後、俺は隣県の有名国立大に入学した。
入学試験において高い成績を収めたため、返済不要の給付型奨学金制度の対象者に選ばれた。
これを目標にしていたこと、そして何より両親が大いに喜んでくれたことで、自身の達成感、喜びもひとしおだった。
高校を卒業すると同時に、両親の元を離れて一人で生きていくことに挑戦したかったため、大学付近のマンションに住むことにした。
両親は不安の色を残しながらも、それ以上に応援してくれた。
仕送りも最低限の額に留めてもらい、あとはアルバイトで生計を立てることにした。
引っ越しや大学生活の準備を一通り終えると、アルバイトを始めた。家からモノレールで20分ほどの場所にショッピングモールがあり、その一角にある喫茶店が自分の職場だ。
店長をはじめ、マネージャー、社員、同じアルバイトの人、総じて人柄がよく、良い職場に巡り会うことができた。
アルバイトの中には同じ大学に通う一回生がいて、学部も自分と同じで、話しやすかったため、すぐに仲良くなった。名前を宇野大聖という。
彼は四国出身で豆腐屋の跡取りらしく、卒業後は家業を継ぐそうだ。世俗を知り、人を知り、自分の知見を広げたいと考えて都会に出てきたと聞いた。
短髪、切れ長の目を筆頭に体のパーツがきりっとしており、体躯も大きく引き締まっている宇野は、どうやら高校時代はラグビー部に所属していたらしい。
彼は厨房での仕事を任されており、自分はホールの担当だった。働き始めて数日後には数人のお客さんから連絡先を聞かれたが、丁重に断った。マネージャー曰く、自分目当てで来るお客さんもちらほらいるそうだ。しかし、いまはまだ新生活にも慣れきっていないので、自分の中で色恋は二の次だった。
そつなく、とまではいかなくとも、周りからのフォローもありアルバイト生活は順調に滑り出した。
そしてすぐに入学式を迎えた。
同じ高校から進学してくる同級生はいなかったため、新しく一から人間関係を構築しなければならないのだが、自分には宇野がいたおかげもあって苦労することはなかった。
当選 高瀬拓実 @Takase_Takumi
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