アイちゃんと骨さんとともだちとセンパイ

今村広樹

本編

 アイちゃんが『UFOからはじまる村おこし』という本を読んでいると、コオリちゃんがガラリと教室の引き戸をあけて入ってきました。

「アイちゃん!」

「なあに、コオリちゃん大きな声出して?」

「センパイと連絡取りたいんだけど、連絡先わかる?」

「センパイって、どの先輩?」

「ほら、フクちゃんといっつも一緒にいる……」

「ああ、あのセンパイのことだね。というか、センパイとフクちゃん、女子寮の同室だから、フクちゃんに聞けばいいじゃない?」

「まあ、そうなんだけどね」

と、その時コオリちゃんの背後から、目のハイライトがない小柄な少女がいきなりに出てきて、こう言いました。

「ボクのこと、呼んだ?」

「わあ、センパイいきなり出てこないでくださいよ!」




「それにしても、ボクになんの用だい?」

「ああ、そうだったそうだった、聞いてくださいよ、センパイ」

と、コオリちゃんはズイッと顔をセンパイに近づけて、こう続けます。

「かくかくじかじかで、かくかくじかじかな訳で、センパイに頼もうかなあて」

「マジかあ、そんな便利屋扱いなんだな、ボクは」

と、センパイはうなだれます。

「ショック受けてるところ悪いんですけど」

「うん?」

「かくかくじかじかてなんですか?」

 アイちゃんがそう聞くと、センパイはそんなことを聞くのかと言わんばかりの様子かんじで、こう返しました。

「かくかくじかじかは、かくかくじかじかだよ。長々と説明してもめんどい時に使う符丁よくあるやつだよ」

「説明って誰に?」

「メタい話をすると、読者にかな?

まあ、ここら辺は広げるところじゃないね」

と、センパイの話が終わると、コオリちゃんは

「あ、そうだ、前にセンパイに話してたじゃないですか、アイちゃんの作るお菓子や料理の話」

と、言い出しました。

「そう言えば、そんなこと言ってたなあ」

「ねえ、アイちゃん、センパイがこれから働きづめになるんだけど、なにか軽食作れないかしら?」

「うん、良いよ」

「じゃあ、任せたわね。私はセンパイと用意してるから」




「ふむ、それならこんなのはどうかな?」

と、

 実は、さっきからアイちゃんのていで話していたのは、アイちゃんの首にある頭蓋骨のペンダントの骨さんでした。口下手というか喋りになれてない彼女の意思を伝達しているのです。

 そして、料理が好きなのは、アイちゃんではなく、骨さんだったのでした。

 さて、頼まれたアイちゃんと骨さんはこんな風なモノを作りました。

 まず、パンにバターを塗って、ゴマを一面振りかけます。そのパンをオーブントースターで軽くきつね色になるまで焼きます。最後に、縦に四つ切りにして、完成できあがり

「こんなんで、良いかな?」

「うん、良いと思う……」




 ゴマのトーストが出来上がると、センパイとコオリちゃんが用意が出来たらしく帰ってきました。

「なんで、ボクがこんな格好しなきゃならないんだ。普通はサンタやトナカイじゃないのかい?」

と、グチってるセンパイは、タイガーマスクの仮面マスクとスーツという格好コスプレをしているのでした。

「クリスマスじゃないんだし、今回はこれでいいんですよ」

「そんなもんかね?

あ、ゴマのトーストありがとね、美味しそうだ」

と、首を傾げながらセンパイは教室を出ていきました。

「コオリちゃん、センパイになにさせるの?」

「うん、なんかの独立運動とかいうので、こちらに難民として来た子供たちにプレゼントを贈ろうと思ってね」

「それで、あの格好?」

「センパイ、仕事柄色んな格好するらしいから、嫌々言いながら着てくれたね」

「ああ、センパイ色んなバイトかけもちしてるからなあ」

「メインは、清掃業らしいけど」

「ふうん」

 アイちゃんは、興味を無くした風に、そう呟きました。




後日談

「子供たち、喜んでたよ。おもちゃとか、文房具とか」

「いやあ、喜んでくれたので、良かったですよ」

コオリちゃんはエヘンとしながら、センパイにそう返しました。

「あと、アイちゃんだっけ、彼女が作ったゴマのトースト美味しかったよ。学校にあるものだけで、よくあれだけやるもんだ」

「ふふ、アイちゃんも喜びますよ」

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アイちゃんと骨さんとともだちとセンパイ 今村広樹 @yono

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