三角関数だけの問題ではない

優れたインタフェースは、内部構造を知らなくてもそれを使えるようにする。それはとても便利なことだけど、内部構造を知らないのでうっかり必要な要素を壊してしまうことがある。この小説では、その危うさが三角関数という要素を壊すことによって露呈する。

三角関数それ自身も「角度を渡したら余弦とかが出て来る」というインタフェースを持ったブラックボックスだ。三角関数が内部でどういう計算をしているか知らない人も多いだろう。僕も知らない。だから、何かを禁止したらうっかり三角関数まで使えなくなってしまうことが考えられる。三角関数という題材は、それが他の技術の要素でありながらも、それ自身も何か他の要素から成り立っていると思われるブラックボックスであるという、深読みすると面白い題材だと思う。

しかしながら、僕は三角関数を必修にすべきかと言われると悩む。数学や物理学で複素数を使えるなら、オイラーの公式で三角関数を表現できるのではと思う。計算機上で効率良く実行するテクニックとしては実数で処理できる三角関数は便利だが、理論上は複素数で扱っても問題ないように思う。このあたりは掘り下げていくと対象読者が狭くなっていってしまうので小説にするには難しいかも知れないけれど、読んでみたかった。