文体は小説のようで、どこかメタ視点な印象を受ける。テンションで乗り切ることもないし、井戸端でお喋りするような直情的な印象は受けない。一見凪のような文章を書く人なのかな、と誤解し掛けるがそれは早計である。嵐の前の静けさの如く、読み進めた人の心を揺さぶるほど凄まじく面白く、引き込まれる文章である。
自分の思いを理路整然に文字にしながらもどこかから紛れ込んでくるユーモア。藪の中に隠れてその鋭い切っ先を向け、読者が気付かない内に「ぷすり」と身体に刺さっている。気付いたらいつの間にか笑ってしまっている。
世界中のムキムキを愛し、関西弁を愛し、豚キムチも後から認める。
灘乙子さんの世界はとても心地が良い。一読をオススメします。
「ついに」なのか「やっぱり」なのか、とにかく、あの灘乙子先生が帰ってきてくださ
ったのである。ありがたや。
めちゃくちゃ牧歌的な環境で、ほっこりしたご家庭を築き、ほのぼのと暮らしておられるはずなのに、なぜかやさぐれた文体とすれっからしな角度で日常を切り取る目線はとても新鮮です。関西バージョンの「ちびまる子ちゃん」、もしくは主婦になった「じゃりんこチエ」といったところか。
学生時代にラグビー部のマネージャーをされておられたので、ラグビーにたいへんお詳しいし、岡崎体育の曲もお好きだし、町田康さんの作品もお好きだとのことで、拙僧とほぼドンピシャの趣向なのは、個人的にはたいへん嬉しい書き手さんです。しかし一方で、ラグビーネタなどは、古くから灘乙子先生を支持する、一般的カクヨマーの方々から敬遠されると思われ、PVの伸びも芳しくないかも知れません。それもこれもラグビーがまだ日本においてマイナースポーツなのが悪いのです。
今年はいよいよ、ラグビーのW杯が日本で開催されます。灘乙子先生の観戦レポートを、心から楽しみにしております。
灘乙子先生の電子書籍「山田のはなし」も
若干ラグビーと関係ある、素敵なお話です。
カクヨムで閲覧できるエッセイをご覧になって、灘先生にご興味をお持ちになった方は是非とも「山田のはなし」をお読みください。課金するだけの価値は十分ございます。
「阿保バカ」のエッセイ集もシーズン1から3までもカクヨムで無料公開されております。併せてご覧ください。
前回、公開したエピソードの中からいろいろ選抜されておられるようですが、たしか町田康のコンサートに行った時に、ワキガの観客の臭いが手の甲に染み付いてしまい、そのニオイをご友人に嗅がせて、ご友人から本気パンチを食らったエピソードがカットされていたのは、ちょっぴり残念でした。
あと、近鉄だか阪急だかの石切駅あたりから見える夕焼けがとてもきれいで、乗客の一人が携帯電話で撮影したことに灘先生は反感を持つというお話。写真を撮らずに心に焼き付けろよ、と。後日、拙僧もたまたまあそこを通る機会があり、夕焼けがきれいだったのでちゃっかり、スマホで撮影してしまったのであります。てへ。