前作「歯車のエストレ」が非常に面白かったので、今回もワクワクしてページを開けたのを覚えている。
タイトルからして、どうやら前作で活躍した運び屋フリージアが中心となる騒動のよう。
概要にあるように、最初は確かにあった「フリージア」という存在が回を追うごとに徐々に物語から消失いく様はお見事!としか言いようがない。
前作同様の洒落っ気のあるセリフ回しと、二転三転して目を離させないストーリー。それに加えて今回は、回を重ねたぶん各々の登場人物の過去や心情がより丁寧に掘り下げられていたように思う。
セリフ回しの妙や展開のテンポの良さを残しつつ登場人物に深みを持たせる作者の筆力には、毎度ながら拍手を贈りたい。この作品風に言うなら脳内の紳士淑女全員がスタンディングオベーションだ、といったところか。
今回も見事に回りに回った歯車達の物語、詳細は是非とも実際に読んで確かめて頂きたい。
同作者様『歯車のエストレ』の続編です。未読の方はそちらもオススメしますが、未読でも十二分に楽しめる作品です。
『歯車のエストレ』のレビューでも書かせていただきましたが、「活字でやるエンターテインメントのすべてが、ごった煮で煮えくり返って、噴きこぼれんばかりの勢いで迫って来る、強烈な作品」であるところは変わらず、今作にはさらに突っ込んだ「人の記憶とは何か」というテーマが隠れているように読み取りました。大きく、ともすれば重苦しくなるテーマを、活劇として描ききる手腕には、読んだ方は総じて驚かれるのではないかと思います。
活字でやるエンターテイメントに限界はない、と思わせてもらえる作品です。