火野トカゲの計画

春根号

第1話


わたくし、火野蜥には壮大な計画がございます。

ざっくりといえば完全犯罪でございます。


壮大な計画の発端となったのは忘れもしない10年前。

当時8歳であった私は、12月25日の朝を待ちわびておりました。

何故か?それは赤装束の老人がプレゼントを配りにいらっしゃるからでございます。

期待と興奮で寝付けない体を無理矢理に寝付かせ、起きてみると枕元には何もございませんでした。

落胆したまま朝の食卓につくと、申し訳無さそうな父親から話がありましたわ。

「すまん、トカゲよ。倒産してしまった」


言い忘れましたが父親は起業なさっており、その縁で結婚、そして私が生まれましたわ。

「だから、今年のクリスマスプレゼントは、なしだ......」

父さんが倒産などというダジャレが頭の中を右から左へ通り抜け、それと同時にサンタである事実を告白されたのです。

父さんイコール倒産イコールサンタさん。

さんで韻を踏めますわね。


事実を理解した私は号泣、喚叫、阿鼻叫喚のフルコース。

なだめる母と申し訳無さそうな母親に囲まれ私史上最悪のクリスマスとなりましたわ。


なんやかんや倒産した父を支えるため学生の身ながらもバイトに勤しみ家計を支えましたわ。

結果として一家離散することなく、パートで働く母と経験を生かして知人の手伝いをしている父と仲良く暮らしております。

そんな私が計画したのはクリスマスへの復讐でございます。


コツコツとためたバイト代を元に活動資金を形成、入念な下調べを元に、

ついに今年実行することとなりました。


計画実行のため12月24日、夜もふけ、誰もが眠った時間に私は行動を起こしました。

両親が眠りについたことを確認して、着替え計画に必要な道具を鞄に詰め込み家を出ましたわ。

そして下調べを元に町内のターゲットの家を確認して不法に侵入し、事前にリサーチした子供部屋へと忍び込みましたわ。

そして、私は鞄から荷物を一つ取り出し、名前を確認してそっと枕元に置きましたわ。


町内の全ての子どもたちの枕元に不法侵入し勝手にものをおいて帰る。それが私の壮大な犯罪計画ですわ。

ミッションコンプリート、それを確認した私は証拠を隠滅し、あたかもずっと寝ていたかのように布団へ入りましたわ。


起床、すると枕元には何やら箱がございました。


「Merry! Xmas!」

両親とサンタさんからのプレゼントでございました。

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火野トカゲの計画 春根号 @halroot

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