志――南朝編

楽志1  督護歌     

宋書巻十九 楽志 全2編



督護歌とくごか】という歌について。


劉裕りゅうゆう司馬休之しばきゅうしと戦ったとき、

徐逵之じょきしという人が敵幹部の魯軌ろき

殺された。


劉裕、近衛兵の丁旿ていごという男を派遣、

徐逵之の遺体を回収、埋葬させた。


ところで徐逵之の妻は、

劉裕の長女、劉興弟りゅうこうていである。


戦いから帰還した丁旿を、劉興弟、

自室に招き、間に人も介さずに、

直接丁旿から葬送の様子を聞いた。


そして話を聞くごとに、劉興弟、

大いに嘆息しつつ、言う。


「あぁ、丁督護ていとくご!」


その呼びかけの哀切さは、

すぐさま人々の話題となった。


後の人々がその呼びかけを真似するうち、

曲として世の中に広がるのだった。




【督護歌】者,彭城內史徐逵之為魯軌所殺,宋高祖使府內直督護丁旿收斂殯霾之。逵之妻,高祖長女也,呼旿至閣下,自問斂送之事,每問,輙歎息曰:「丁督護!」其聲哀切,後人因其聲,廣其曲焉。


【督護歌】は、彭城內史の徐逵之の魯軌に殺さる所と為り、宋高祖の府內直督護の丁旿をして之を收斂し殯霾せしむ。逵之が妻、高祖が長女なるは、旿を閤下に呼びて至らしめ、自ら斂送の事を問い、問いたるの每,輙ち歎息して曰く:「丁督護!」と。其の聲の哀切なること、後の人は其の聲に因りて、其を曲として廣めたる。

(宋書19-2_文学)



この曲の詳細については

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881962323/episodes/1177354054884634709

参照。


旧唐書では作者が孝武帝と言うことになっている。えっ……劉興弟、あなたのパパのお姉さんですよ……自らの伯母にまつわることでこんな曲作っちゃったら、不敬もいいとこじゃないの……。

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