ほしの名前。
望月 朔
第1話 手紙
高橋君から手紙が届いたときは、正直に驚いた。
今の出版社に入社してから三年目の春のことだ。
仕事を終えて帰途につくと、母が不審な顔つきで何かを睨んでいた。
「ただいま。何見てるの?」
母はこちらに振り向き、亮磨に見せようか悩んだんだけど、と前置きして、それを差し出した。
「高橋俊樹って人から亮磨に手紙が届いたの。けど聞いたことない名前だし……。どう、見覚えある?」
高橋俊樹……。聞いたことのあるような無いような名前だ。いや、少々失礼だが、どこにでもありそうな名前だからだろうか。
「分かんないなぁ。」
「そう……。いやねぇ、いたずらかしら。」
そう言って母はその手紙を捨てようとした。
「ちょっと待って」
何故が反射的に体が動き、僕は母の手からそれを奪った。
「どうしたのよ、急に」
僕自身もよくわからなかったが、なんとなく中身を見てみたいという衝動にかられ、少しばかり嘘をついた。
「思い出したよ。その人、ええと……高橋ってやつ。彼は職場の同僚だよ。いやぁ、危ない危ない。」
すると、母は普段からしわの寄っている眉間をさらに縮めて、
「今どき手紙なんて、珍しい人ね。」
と言った。
「いやぁ、随分と古くさい人でさ。携帯持ってないんだよ。」
母は、今どき携帯無しでどう生活するのかしら、と言いながらお茶をすすった。
僕も何故こんな嘘をついたのかと思いながら、つられてお茶をすすった。
4月18日
No.14
手紙を不審に思った母親が、一度捨てかけるが、突然No.14が突然手紙を奪い、無事No.14の手に渡った。
しかし、No.14は相変わらず勘が鋭いため、警戒すべきである。
ほしの名前。 望月 朔 @aomushi_gt
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