第4話

嗚呼ああ、アレが陰陽師おんみょうじか。」

 月輪神社げつりんじんじゃに立って、いんを強めた。

 さぁ、帰りやれ。

 人を喰やり、負を喰やり、わっちは生きる。

 陰陽師はお呼びでないのさ。

 月輪が沈むまで、うっとりと。

 クックック、と喉で控えた笑い声を立てた。

 屋根の上でそのこうべを上げる。

 月輪を見上げたその姿を目にすれば。




 妖全辞典第四十九


 月輪黒狐 陰纏き負情喰きモノ

 月輪浮き空 限ぬ愛思き 夜好き


 訳___


 あやかしの全種辞典第49


 月輪げつりん黒狐こくこ、陰をまとい負の感情を喰うモノ。

 月輪が浮かぶ空を、限りなく愛しく思い、そのを好む。


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人と妖の片道は 影宮 @yagami_kagemiya

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