鬼の国で花が散る

作者 中村天音

50

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★★★ Excellent!!!

まだ途中までしか読めていないのですが、読み応えある丁寧な文章に惹かれて、レビューを書かせていただきたいと思いました

多分、主人公は長宗我部元親なのですかね
明智光秀が出てきたぐらいからワクワクしています。

実在の戦国武将が登場するのに絡めて、ファンタジーな要素も盛り込まれ、歴史にフィクションの登場人物がどう絡んでくるのか……

今後の展開が楽しみです。

★★★ Excellent!!!

土佐の戦国情勢と平家伝説を中心に、ストーリーは進んでいく。
実在・架空も含め、多彩な人物達が登場するなか、個人的にもっとも魅了されたのは、人外の白だ。
壮大なバックグラウンドを持ちながらも、人間以上に人間くさく、かつ、美しい信念の持ち主であるこの白の造形の秀逸さこそが、本作品の印象深さの源泉になっていると思う。

文章がたいへん達者であり、豊かな伝奇性の中に、格調の高さが光っている。

★★★ Excellent!!!


 四国ではこの二十年ほどで高速道路が整備され四国四県の往来が盛んとなった。瀬戸内海から四国山地を抜けて高知県に入る、または宇和島から旧中村市へ、もしくは久万高原町から仁淀川に抜けて出る道を使って高知県に入る等、他のルートもそうだが、山中から高知県を見たり、石鎚山に登り瀬戸内海と反対側の太平洋側を見たりすれば延々と続く山をみることで、かつて土佐と呼ばれたこの一帯が伊予、阿波、讃岐と隔絶した地であったかが分かる。山深いこの一帯に安徳天皇の陵墓候補地や壇ノ浦後に落ち延びてきた平家の隠れ里の伝承も多いのもうなずける。
 しかし、土佐という国は海運でみれば九州や和歌山との交易が盛んであり、勘合貿易への関与、琉球や李氏朝鮮との貿易、九州の諸大名とのつながりなど、日本だけでなく世界と結びついているのである。外壁のように屹立する四国山地の雄大な自然、全てに開かれた太平洋、こういった二面性が戦国や幕末で活躍する土佐の人々の行動の背景となったのであろう。

 本作『鬼の国で花が散る』は平家の隠れ里で生まれた勝隆の視点で動いていく。平家再興のために三百年の雌伏を耐えてきたその村は、終に時世に取り残され、村の存在意義である平家の再興を諦める。村を出る勝隆が長から託された剣は草薙剣であった。
 一種のユートピアである村から外界に出た勝隆は姫若子と称される長曾我部元親、もとい綾姫と出会い、生き方を模索することになる。親から生き方を強制された綾姫と、村の生き方から脱してきた勝隆の対比がこの物語を彩っている。
 また、狂言回しとして、人外の存在である白によって、物語を時には俯瞰的に人の善性や悪性から判じたり、時には読者視点でまた人の世界の生きづらさや不条理を語ったりしている。そして白達人外の、人に道を示す者達が時折人に見せる感情は、大きな歴史のうねりに翻弄される人への情愛に満ちて美しい。
 武士や家族… 続きを読む