あとがき・バックヤード
クリスマス明けて、26日。
『特別編制作に至ったワケ』
「もう、ビックリしたわよー? みかさちゃんから3年ぶりに電話掛かって来たんだもん」
「ぶしつけですみませんでした」
「ううん、嬉しかったの。大きくなったわね」
「おかげさまで」
オシャレなカフェのテラスにて。
嵩井さんは、ニコニコと嬉しそう。
「あたしたちはずっと待っていたの。あなたが帰ってきてくれるのを」
「戻るつもりはなかったんです」
「でしょうね。決意は固かったと思うわ」
嵩井さんにはお見通しなんだろうと思う。
「……自分勝手だとは思いました。無茶なお願いを聞いてくださってありがとうございます」
「いいのよう! いつかはメディアに出そうって色々準備してたから、それをちょちょいと改変するくらい余裕だわ」
「ありがとうございます」
頭を下げるしかできない。
「あたしもね、ただの成長アニメじゃ何か足りないと思っていたの。小学生だから健全にってのが仇になっていたのね。穢れを知らない純真無垢な天使。男の影なんてえ! って固定概念が、あたしを含め、制作陣の中にあったのよね。小学生なんだから、恋くらいするのに」
「か、嵩井さん! 」
初恋だなんて言えないけど、バレてるよね。
「だってえ、運命じゃなぁい? みかさちゃんが戻る決心を得るには理解者が必要だった。偶然とはいえ、盲目的にキャロルが好きなクラスメイトに出会う。キャロルへの想いを語り、キャロルとの再会を切望した。……あなたなら、ファンの想いに応えない訳に行かないものね。うふふ」
「言わないで下さいよお……」
「人気者のクラスメイトがいて尚、自分に逢いたいって言われたらきゅんってしないわけないじゃなぁい? 」
全部話さなければならなかったとはいえ、こうもいじられたら、はずかし過ぎる。
「お願いします……もう、やめて」
「あーん! みかさちゃん、照れてるー! 可愛いー! 」
一々リアクションが恥ずかしいったら。
「……ま、これで逃げ場はないわよ? 声優だけじゃなく、子役から女優! あれだけ再現出来たんだから、出来ないなんて言わないでしょう? 」
「はい……」
わたしは……根暗で、人見知り。
それを直したかった。
そんなとき、嵩井さんにスカウトされた。
何がやりたいかなんてわからなかった。
カウセリングして、顔は出さないけど、実力が物をいう声優を選んだんだ。
わたしのために、『
打ち切りになったのは、わたしが成長りきれなかったせいもある。
だから……──。
「さあ! これから忙しくなるわよ! 『
「はい……──! 」
あの特別編は炎上レベルで、『
見た人からのダメ出しや改善点が多く寄せられ、息を吹き返した。
露出したことにより、本当の実写版まで切望された。
特別編の構成がかなり評価されたためだった。
……今更だが、平成アニメなのに昭和アニメ感があるという声が1番多かった。
余談だけれど、2期制作を機に、マネージャーがつくことになった。
まだ会っていないけど、本当の意味で人見知りなくせる人だといいな。
『翔琉の疑問』
「……あのさ、どうやって入ったの? オレの部屋、2階なんだけど」
「それはね。プロデューサーが翔琉くんのご両親に許可を取って、翔琉くんがいない時に映像撮らせてもらったんです。当日はご両親に協力頂いて、窓の鍵開けておいてもらいました」
翔琉くん、( oㅂo )としています。
「……父さんと母さん、知ってて知らないふりを」
「2言返事で、むしろ喜ばれていたそうなんですが……なぜでしょう? 」
嵩井さんはどう説明したか、ざっくり過ぎてわかりませんでした。
「……美翼は口が上手い大人には気をつけてよ。すぐ騙されそう」
「そう、ですか? テレビって偉大って話ではないんですか? 」
翔琉くんは深い溜息をついてしまった。
わたし、変なことを言っただろうか。
『誰が好き? 』
「翔琉くんは、キャロルが好きなはずですよね? 」
「オレはキャロルが好きで、その声優をした皇みかさが好きで、美翼がす、す、す、す……すき、で……」
「は、はい……」
「全部ひっくるめておまえだろ? 」
「はい……」
happy end
恋するサンタガール 姫宮未調 @idumi34
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