古風な語り口で届けられる「大切な人」の物語
- ★★ Very Good!!
二人の男女を中心とした話であり、「恋愛」というより「大切なモノ」の物語であるような印象を受けた。語りはやや古風な言い回しだが、軽妙であり非常に読みやすいと思う。(近い文章の書き方を挙げるなら「神様のカルテ」シリーズ)
以下細かい感想兼レビュー。完全に主観による判断なので用注意されたし。
序盤はライトノベルチックというか、若者の面白い会話がメインに据えられているためスルスルと読むことが出来る。一転して中盤はタイトルから連想するようなやや暗い雰囲気を漂わせる話となり、故人をしばしの間回顧する主人公の様子が描かれる。しかし主人公たちもその別れをある程度飲み込んでいるからか、その暗さも見る側が陰鬱となるほどではなく、全体体な雰囲気はスッキリとしているのが個人的には読みやすくてよかったと思う。そして終盤にかけて押し寄せてくるのが恋愛要素であり、ここに関してはあえて何かを語ろうとは思わない。読んでいただければきっと伝わるものがあるだろう。
最後のオチがあるおかげで作品全体の空気感もほっこりとしたものに仕上がっていて、読後感はかなり良い。文章も五〇〇〇字前後と比較的短いため、十分かからずに読めるだろう。興味のある方はぜひ一読してほしい作品だ。
強いてマイナス点を挙げるとするならば、やはり「恋愛小説」としての完成度だろうか。文字数の都合上、どうしても恋愛要素が薄くなってしまっている気はする。「胸キュンストーリー」を想定して読むよりは、「青春小説」ぐらいの気持ちの方がよいやもしれん。