最終話 サンタのいるクリスマス
雪の降るクリスマスイブ。これぞまさしくクリスマス。二人は歩いていた。
「どうして仕事を横取りするんじゃ」
「いつもソリ引くだけじゃつまらないし。それに、もう子どもじゃないからこうちゃんはプレゼントもらえないでしょ」
「わしは誰にでもあげるとも。みんな子どもみたいなもんじゃ。大人は、子どもが思うほど大人じゃないんじゃよ。子どもは大人が思うほど子どもじゃないようにな。ほっほっほ。要するに、お前のお気に入りだったんじゃろ? まぁそれはさておき、さあ今年も頑張ろう。危うく、わしのいないクリスマスになってしまうとこじゃったからな」
「そうだね、頑張らなくちゃ」
──お前の鼻が役に立つ。つまりあたしは体のいいパシリってこと。
まあいいや。こうちゃん、プレゼント喜んでくれたかな。
*** *** ***
緑の箱をコートの下に隠して、航平は、様々な色の光で飾り付けられた、真っ白なクリスマスイブの中を歩き始めた。
クリスマスという特別な時期に、特別な気持ちを運んできてくれるのがサンタさんだとするのならば、確かにサンタさんは、いる。のかもしれない。
分からないけど、信じることが何よりも大切。
雪はまだ降っている。やむ気配はない。
気温はすこぶる低いし、依然として吐く息は真っ白。
途中で寒くならないように、コーヒーを買おう、と航平は思った。
久しぶりに、うんと甘いやつ。
サンタのいないクリスマス 紬木もの @Aqua_8823
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