第13話 嵐を呼ぶ転校生

「えー、突然だが、転入生の紹介をする」


ホームルームの始まりは、先生のその衝撃的な一言だった。


「転入生?この時期にか?」


「男子かな?それとも女子?」


「俺は女子に一票!」


教室の中がざわざわし始める。


「なぁサム、お前はどう思うよ?」


グラウスが聞いてくる。


「どうも何も、転入生が女子だろうが男子だろうが関係無いだろ?俺には関わりのない話だ」


どうせ、俺と仲良くなろうなんて物好きはそうそういないだろうし。


「そう言うなよ〜、予想だけしてみろって、な?」


何が、な?だよ。


「じゃあ、女子でいいよ」


「そうかそうか、女子か...。お前も男子って事だな!」


「俺はそういう意味で言ったんじゃねぇ!」


「はいはい、そろそろ静かにしてくれー」


先生の声で、教室は少しづつ静かになっていく。


「はい、じゃあ紹介するなー。入って来てくれ」


ガラガラ、と教室のドアが開く、そして入って来たのは...


「な!?」


「どうも皆さん、はじめまして。クリス・ヴァリアーナと申します。どうぞよろしくお願いします」


予想だにしていなかった人物だった。


<hr>

「えー、ヴァリアーナさんはルギアナ王国から来ました。分からないことも多いかと思うので、皆さんが色々と力になって上げてください」


先生がクリスの紹介をする。クリスの正体以外については、昨日本人から聞いた内容と変わりはなかった。クラスメイトの反応はと言うと...


「あの子、かなり可愛くない?」


「だな、なんか、そこに立っているだけで人を惹き付ける何かがある!」


男子生徒共のテンションがめっちゃ上がっていた。

立っているだけで人を惹き付けるとか...本気か?


「なぁサム、あの子結構可愛いよな?」


グラウスがいきなり話を振ってきた。


「別に何も感想は無いよ…」


「なんだよ〜、冷めたやつだな」


「冷めてて結構」


生憎、俺は色恋沙汰に全く興味が無い。

出会いが無いとかそういう事ではなくだ。実の所、俺宛の縁談の話は少なくはない。全部断っているが。


話が終わったのか、クリスと先生が何か相談している。あ、クリスが一瞬こっち見た。


(なんかすっげぇ嫌な予感がする)


そして、こういう予感は確実と言っていい程当たる訳で...


「ヴァリアーナさんは、ロンデンハーツの後ろの席に座ってもらいます」


「はぁ!?」


「なんだロンデンハーツ、何か問題でもあるのか?」


「いや、なんで俺の後ろなんですか!俺の後ろにはニック君がいるじゃないですか!」


「ニックには席を移動してもらう。良いよなニック?」


「いいですよ」


なんで承諾するんだよー!


「じゃ、じゃあ理由は何ですか?俺の後ろ以外にも席はあるじゃないですか?」


「お前、ヴァリアーナさんと面識あるんだろ?なら、そっちの方が都合が良いじゃないか」


反論出来ん...


「そういう事だ、じゃあヴァリアーナさん、あそこに座ってもらって良いかい?」


「わかりました、お心遣い、感謝します」


そう言って俺の後ろの席にやってくるクリス。そして、俺の横を通り過ぎるかと思ったが、急に立ち止まり、


「また近いうちにって言ったでしょ?」


満面の笑みで話しかけてきた。


<hr>

クリスが席に座り、ホームルームが再開される。


「えー、今日は全学年合同実習だ、怪我の無いように気をつけるんだぞー。ヴァリアーナさんは今日が初めてだから、ロンデンハーツ。お前が色々案内してやれよ」


だからなんで俺なんだよ…。


「じゃホームルーム終わるなー」


クラス委員が号令をかけ、ホームルームが終わる。そして先生が出て行くと、クリスの周りにクラスメイトが群がり始める。


(俺はさっさと避難〜っと)


俺の後ろの席に群がっているので、巻き込まれたら困る。

そうして、席を立って教室を出ていこうとすると。


「ロンデンハーツさん」


クリスから声をかけられる。どうやらあの輪から抜け出してきたようだ。


「あいつらほっといて良いのか?」


「ええ、後日お話しますと言って来ましたので」


流石王女、ああいうのには慣れてんのかね。


「はぁ...で、何のご用で?」


「校内を案内してもらおうかと」


「あいつらの誰かにして貰えば?みんなしたがってるだろうし」


そう言って俺は輪になってるクラス連中を指差す


「いえ、ロンデンハーツさんにお願いしたいんです。依頼の件もありますし」


「はぁ、分かったよ。だが、とりあえず知り合いと合流させてくれ」


イリアが1年の教室で待ってるだろうし。


「グラウス!行くぞー」


グラウスを呼ぶ。


「あいよーって...、ヴァリアーナさんも一緒なのね」


「ああ、渋々だが、案内する事になった」


「私の事はクリスと呼んで下さい」


「あいよー、じゃクリスさん、行きますかー」


何故か無駄にテンションが高いグラウスが先に歩き始める。


「はぁ、調子の良い奴だ。まぁ、悪い奴ではないことは保証するから安心しろ」


クリスにそう言うと。


「そのようですね。ロンデンハーツさんも彼のことは信用しているようですし」


前を歩くグラウスを見つめながら、クリスが言う。


「そういうの、見てわかるか」


「ええ、実に分かりやすいです」


「...ふと思ったんだが」


「なんでしょう?」


クリスが首を傾げる。


「お前、学園じゃそのキャラで通すつもりか?」


研究室ではそんなお嬢様らしい口調では...、いや、最初はそうだったが、途中からは王女様らしからぬ口調だった。

そして、クリスは満面の笑みで、


「何のことでしょう?」


と言った。

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幻のプレスティージオ @Karasma0

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