第12話 日常+α
腕輪を身に付け、部屋を出ると、ルゥが部屋の前で待っていた。
「おはようございます、主様。朝から誰とお話を?」
「っ!?な、なんの事かなぁ?」
そんなに大きな声で話していた訳では無いのだが、どうやらルゥには聞こえてしまっていたようだ。
「隠したいことなら深くはお聞きしませんが…何かあれば話してくださいね?」
「...その時が来れば話すよ」
ルゥには申し訳ないが、まだ自分以外に説明できるほど状況整理ができていないので、話を逸らす。
「そういえばルゥ。昨日の夜に頼んだ事だが、必要無くなった」
「何故ですか?」
「箱を開く事に成功した。中身はこの腕輪だったよ」
俺は身に着けた腕輪をルゥに見せる。
「おめでとうございます!それで、この腕輪はどのようなものなのですか?」
「それは後で説明する。とりあえず朝食にしよう」
「畏まりました」
そう言ってルゥは早足で一階へ降りていった。
<hr>
朝食を食べ終えた俺は、イリアとルゥを部屋に呼び、現状の説明をした。
「さて、ルゥにはもう話したが、今朝、例の箱を開く事に成功した」
「本当ですか!?一体どうやって?」
イリアが興味深々な様子で聞いてくる。
「信じられない話だとは思うが、昨日夢で神様が出てきて開け方を教えてくれた」
「お兄様、何か悪い物でも食べたので?」
うん、想像してたのより酷い反応だ。なんかルゥも心配そうに俺を見てくるし。
「俺は真面目な話をしているんだよ、イリア。実際にそれで開く事が出来てるんだから。俺も未だに信じられない体験をしたと思ってんだ」
俺は腕輪をイリアに見せる。
「これが中に入っていた腕輪だよ」
「これが中に...!?一体何なんですかこれは!?」
イリアが急に血相を変えて叫ぶ。
「見ただけでわかります...。この腕輪にどれだけの魔力が宿っているのかが!こんな魔導具見た事がありません!」
魔導具。使用者の魔法の効果を飛躍的に上昇させる道具の事だ、杖などが代表的だが、剣の形をした物など、色々な種類がある。基本的に、効力が高い程値段は上がる。
「おそらく、この腕輪1つでこの屋敷の土地の半分は買えますよ...いえ、それ以上かも」
「そこまでか...ちょっと想像以上だな。」
あの爺さん、ほんとにとんでもない道具俺に渡しやがった。ルゥなんてびっくりし過ぎてポカーンってなってるし。
「ですがお兄様、この際はっきり言いますが、それはお兄様では宝の持ち腐れです。一体どうするつもりなので?」
「妹よ...そこまではっきり言わなくても良くないか?」
ちょっと傷付く。
「まぁ、それに関しては考えがあるから大丈夫だ」
俺はそれとなく答える。あの話をするにはまだ早すぎるからな。
「さて、そろそろ学院に向かおう」
時間が時間だ、これ以上話していると遅刻してしまう。
「そうですね、それでは行きましょう。」
俺は制服の上から白衣を着る。
「?主様、学校に向かわれるのに、白衣を着られるので?」
「ああ、俺は基本的に白衣を来て出歩くからな。白衣きてないと落ち着かないんだよ」
「ですが昨日は着られてなかったような?」
「昨日は白衣を洗い忘れてたから着てなかったんだよ」
「そうなんですね」
ルゥは納得した様子で首を縦に振る。
ルゥを1人待たせるのもあれだし、何か仕事をあげないとな。
「ルゥ、父さんと母さんにこの家の事を色々聞いておいてくれ。家の中を把握しない事には仕事も出来んだろ?」
「わかりました。仰せのままに」
「では行ってくる」
「行ってきますね」
「行ってらっしゃいませ!」
ルゥの元気な声を背に、俺達は学院に向かった。
<hr>
「よっす!サム、イリアちゃん、おはようさん」
学院に向かう途中でグラウスと合流する。
「やぁグラウス、朝から元気だな」
「おはようございます、グラウスさん」
俺とイリヤが返事をする
「昨日の獣人の子...ルゥちゃんだっけ?はどうだった?」
グラウスが変な事を聞いてくる
「? どうって、どういうことだよ?」
「お前の兄貴、性格があれじゃん?」
ああ、そういうことか。
「あいつなら勘当されたよ。もうあいつはロンデンハーツ家の人間じゃない」
「マジか...何もなけりゃ良いがな」
「ああ、あいつがあんな潔く引くわけが無い。絶対何か企んでる」
家には父さんと母さんが居るから、ルゥが手を出される事は無いだろう、となれば、姉さんとイリアが危ない。
「イリア、何かあればすぐに俺に伝えるんだぞ」
「大丈夫ですよ、お兄様。私はジリアン兄さんよりも数段上ですから」
間違いない
「あいつは愚かだが馬鹿じゃない、そう簡単に手を出しては来ないと思うが、一応二人とも警戒しておいてくれ」
「了解。お、そろそろ着くな」
三人で話しているうちに学院の目の前に着いたようだ。
「ではお兄様、また後で」
イリアは学年が違うので、ここで一度別れる。と言っても今日は全学年合同実習なので、すぐにまた合流する事になるが。
「俺らも早く教室行こうぜ」
「そうだな」
そうして、俺達は教室に向かった。
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