第11話 力の代償
目を開けると、見慣れた天井が見えた。それに安心し、起き上がる。
「さてと、さっきの話が夢じゃないなら、箱を開けれるはずだな」
俺はベッドから降りて、机の上に置いてある箱を手に取った。
「確か...強く念じるんだったよな?」
とりあえず物は試しだと思い、念じてみる。
すると──
「なんだ!?この感覚!?まるで何かを吸い取られるような...!」
いきなり箱に体の中から何かを吸い取られるような感覚に襲われる。そして、いきなりそれが収まり、箱が開いた。
「一体なんだったんだ?まぁ、いい。とりあえず中を確認してみるか」
箱の中を確認してみると、中には金色の腕輪らしき物が入っていた。
「腕輪...だよな?流石にただのアクセサリーじゃないと思うが...」
『その通りじゃ。それはただのアクセサリーでは無い!』
「おわぁ!?」
いきなり爺さんの声がして、驚いて声をあげてしまう。
「じ、爺さん!?一体どこから!?」
『ここじゃよ、ここ』
声がした方を見ると、机の上に置いてある箱があった。どうやら発生源はここらしい。
『短時間じゃが、連絡できるように細工してあるんじゃよ、魔力を吸われたじゃろ?それが起動スイッチなんじゃ』
「それ先に言っとけよ...」
生命力かなんかを吸われたかと思ってしまった。
『そう怒るな。さて、時間も押してるから簡単にその腕輪の説明をするぞい』
爺さんが真面目な神様モードになる。
『その腕輪は、代償の腕輪という神具じゃ』
「『代償の腕輪』?だいぶ物騒な名前だな」
代償なんて言葉からして、使う時は何かを支払わないといけないのか?そんな事を思っていると。
『この腕輪を使えば、お主は魔法を使えるようになる』
そんな夢のような事を言ってきた。
「本当にか!?」
『本当じゃよ。さっきも言った通り、お前さんの魔法は封じられている。これがかなり強力な力でな、おそらく解除するのは不可能じゃ。それを限定的に強制解除する事ができるのがこの腕輪なんじゃ』
「凄いな。魔法を強制解除なんて、聞いたことが無い。俺の|魔法消去(スペルデリート)は、あくまでもマナを消し飛ばすだけだからな」
|魔法消去(スペルデリート)は、マナを打ち消し、魔法を消去する。なので、効果が既に発生して、マナの干渉が無くなっている魔法は打ち消す事が出来ない。
『じゃが、代償の腕輪は、その名の通り使用する時に何かしら代償が必要になる。解除する魔法によって、代償は大きくなったり、小さくなったりするんじゃ。』
「俺の場合は、どんな代償が必要なんだ?」
『お主に掛かっている魔法は強力なじゃとさっき言ったろう?じゃが、儂もここまでとは流石に思っていなかったがな』
そして、爺さんは申し訳なさそうに言った。
『代償は、お主の体の一部じゃ』
「体の一部!?」
俺は唖然とする。
『一部と言っても皮を剥いてはいどうぞという訳にはいかんぞ?視力、聴力、腕、脚、代表的なのはそのへんじゃな』
「えげつねぇ...まるで悪魔だな」
『言い得て妙じゃな、これは神具では無く、魔具と言った方がいいかもしれん』
爺さんは一度咳払いして続ける。
『その代わり、お主がその腕輪を使い、魔法を使う事ができるようになった時、お主は人間の中で最強の存在になる。天使に匹敵する力を人間が持っているなど、未だに信じられん』
「俺にそんな力が?」
『その代償が自分の体じゃがな』
「使い所は...考えないとな」
そんな強大な力を持つ相手となんて会いたくもないが。
『できるだけ使って欲しくないが…どうしても必要な時は使うのじゃぞ?死んでしまってはどうにもならんからな』
爺さんは心配そうに言う。
「死ぬつもりはねぇよ。そんなに心配するな爺さん」
『それじゃ、時間じゃ。気をつけるんじゃぞ』
その言葉を最後に爺さんの声は聞こえなくなった。
「切り札よりもさらに奥の手...だな」
俺は一人そう呟くのだった。
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