第2話

なぜだかわからないが、先生の機嫌がすこぶる悪かったので退散してきた。

あれかな、女の子の日かな?女の子って年齢でも性格でもねぇけどな。

ガハハ!


ピンポンパンポーン


『2年3組田中太郎、次会った時がお前の命日だ』


ピンポンパンポーン


大胆な殺害予告をされた。

まぁよくあることなので気にせず部室にレッツゴー。

途中すれ違った巨乳の女子生徒に目を奪われて壁に激突したけど僕は元気です。

気を取り直して部室に突入、スピードは落とさずに転がり込んでそのまま安全確認。


「クリア!」


「サーチアンドデストロイ」


部室の外まで蹴り飛ばされた、友達だよと言いながらその友達を蹴る人も昔はいたらしいから俺は友達、ノープロブレム。


「相変わらずうるせーなお前ら!」


「アナタもね」


「鼻血出してる後輩の前で夫婦漫才するのやめてもらっていいすか?」


「そいつはスマン!しかしまぁやめる気はないから我慢してくれ!」


「そもそも漫才じゃないわよ、僻み妬みはやめてちょうだい」


あー夫婦であることは否定しないのね、そういう感じね?冷やかしへのカウンターが殺傷能力高すぎないかな?

この二人は相変わらずラブラブのようで爆発しろ。

エルフのハーフである爽やかイケメン(内面はゴリゴリの体育会系)エリック先輩。

その彼女であるオークのハーフである杏奈先輩。

ちなみにオークと言っても肌が緑で筋肉質な人程度の特徴だ。

異種姦物好きのオタクがオークに『なんか思ってたのと違う』と書いたフリップを掲げゲリラ特攻して捕まった事件は今なおネットでネタになっている。


「すまんな太郎!お前にもきっと巨乳の彼女が見つかるさ!」


「あ、杏奈先輩はおっぱいっていうより大胸筋って感じなんでそこは大丈夫です」


みんな知ってる?オークはハーフでも力が強いんだ!だからアイアンクローで男子高校生を持ち上げることもできるんだ!


「杏奈先輩?ミシミシいってる。ねぇ!?ミシミシいってるよ!?」





「それじゃあ太郎も来たことだし、今日の活動始めるか!」


「エリック先輩、まだ雪ちゃんとシャル君が来てませんけど」


「今日は1年生お休みよ、あしたの校外学習の用意があるんですって」


「フゴゴ」


「そういうことだ!本日、我々SOS部に来た依頼はペットの捜索だ!」


「ペットですか」


「フゴゴゴ」


「まぁ、いつも通り退屈な依頼ね」


机を向き合わせた簡易な卓での話し合い。

ハーフエルフ、ハーフオーク、ハーフ狐、手足を縛られ目隠しとギャグボールをはめられた罪人がそこにいた。


「そろそろ解放してあげようかしら、視界に入るとなかなか不快だから。理恵ちゃん、とりあえず口だけ開けてあげて」


「アタシがやるんですね……、まぁいいですけど」


理恵はまるで汚いものを触るようにハンカチで手を覆いながら罪人の口だけ解放する。


「フゴゴ!……プハァ!」


「少しは反省したかしら?太郎君」


「反省っていうかもう少しで新しい価値観に目覚めそうです!」


「今すぐ全部解いてあげて理恵ちゃん、それ以上変態になったら流石に不憫だわ」


「面倒なんで狐火で軽く燃やします」


「軽く燃やすってなに?ねぇ、それ大丈夫なやつ?あれ、熱い?熱いぞ!?」


理恵の指先から青白い炎が出て、太郎の拘束を焼き払った。

前髪に燃え移った火を消すために芋虫のような床を転がる太郎だったが、炎はひとりでに理恵の掌に集まり消えた。


「消えた?大丈夫?俺のイケメンフェイスは無事か!?」


「イケメンフェイスじゃないみたいだから、全部燃やして1から生まれ変わらせてあげる?」


「おっとこんなところに鏡が、おぉ!安心しろ理恵!元通りのイケメンフェイスだ!」


エルフの俳優がポーズを決めているポスターを眺めながらご満悦なアホがそこにはいた。

微妙に腰の引けた見てるとイラッとするポーズでウインクをしている。


「アホはアホなのでほっときましょう、で、詳しい以来内容はなんて書いてあるんですか?」


「違うぞ太郎!もう少し腰の角度を……わかった杏奈、説明するからアイアンクローはやめてくれ。えーと、なになに……「ペットのにゃん太が逃げてしまいましたぁ!!!名前が書いてある首輪をしているので探してくださいぃぃぃ!!!」とのことだ!」


「なんでアナタいつも絶叫系になるのよ」


「にゃん太ですか……猫ちゃんですかね?どうするんです?捜索しに行きますか?」


「速効で・お悩み・SHOMETSU!!!が我がSOS部のモットーだ!すぐに行くとも!」


「いつも通り私とエリック、理恵ちゃんも太郎……もといアホの2チームでいいわね」


杏奈の言葉を聞き、苦虫を噛み潰したような顔でアホの方を向く。

先程よりも若干マシになった……いや、まだ大分イラッとする。

イラッとするのにドヤッとしているアホがウインクしていた、ずっとしていた影響か瞼が痙攣している。


「異議がある場合は?」


「却下するわ」


容赦ない即答に、理恵が絶望の色を顔に張り付けた。

というか絶望した。


「太郎!理恵!がんばれよ!」


「任せてください先輩!」


バチコリウインクするアホに、理恵の狐火が飛んだ。




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ファンタジーではなくなった 半間 蛇九 @Djent4999

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