第4話
一瞬誰だか分からなかった。見覚えはあるがあまり心当たりがない……と二、三秒考えたところで思い出した。
あの時より目に生気がない。貧血でぶっ倒れていた時より生気がないなんてことがあるのか? と目を疑ったほどやる気のない目をしている。あの時は地面に横になっていたので分からなかったが私より少し身長が高く、その気だるげな目で見下ろされている。白いワイシャツに黒いチノパンという爽やかな格好をしていた。
彼は、私を見て、生気のない目から更に生気がなくなったように見えたが、気のせいだろう。
「いつかの貧血青年だわ! これは、お礼を言われるんじゃない?」
トウコがややうきうきして笑っている。私も、助けた人物に面と向かってお礼を言われるのはなんだか恥ずかしくてにやけてしまう。
「いや、あの時のことは気にしないで下さい。人間困った時はお互い様ですから」
微笑みを浮かべて、彼に笑いかけた。すると、耳を疑うような音が返ってきた。
「はあ?」
彼は、いや、奴は。
小栗 圭輝は、心底不機嫌そうな顔をして私に向かって中指を立ててドアを閉めたのだった。
桃栗アイスケーキ 魔法の練り物 @mhunkmbk
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