第3話 種田 啓介
窓の外から、鳥が仲良く会話しているような声が聞こえる。窓から入る陽の光は、カーテンにそのほとんどを吸収されて、白くぼんやりした光だけが、部屋の中に入り込んでいた。朝だ。
そう思った時に、スマートフォンのアラームが鳴った。アラームが鳴るよりも少し早めに目が覚めることが僕にはよくあった。何故かは分からないが今日もそんな日だった。
今日も、いつも通り学校へ向かう。茜のいない一人ぼっちの登下校は、意外にもすぐに慣れることができた。むしろイヤホンから流れる音楽に没頭できるこの時間を楽しむようにさえなっていた。学校に着くとまず友人に、「おはよう。」と言い、それから少し経つと、すぐにたわいもない話で盛り上がった。授業は退屈だったが、気の合う友人に囲まれ学校は僕にとって嫌いな場所ではなかった。
満ち足りていた。気の合う友人も居る。僕を好きでいてくれる彼女もいる。進路も大学に行くことが決まっていた。
それなのに、時々僕は原因の分からない不安に襲われた。あと少しで掴めそうでいつも掴めない不安の正体。いつしか僕は、その正体を探すことをやめ、ただ不安の中に身を任せ漂うようになった。
僕は僕の事が分からなかった。ただ分かってしまったら、僕は僕のままで居られない気がした。
藍色 うみま @kaishin
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