第2話 加賀 茜
加賀 茜には夢があった。
シンガーソングライターになりたい。
そのために彼女は、高校をやめ音楽に没頭する道を選んだ。と言っても今の時点では、月二、三回小さなライブハウスで、20分程度有名なバンドのカバーを披露する程度だった。茜は歌が上手い。ギターもそれなりに弾けている。しかしただ、それだけだった。歌が上手くてギターが弾ける。それ以上のものは何も感じなかった。
「もう学校行くことないし、これからは暇な時間使って、音楽のこといっぱい勉強して、すごい曲作るから、見てな!」
茜が退学したその日の帰り道に、そう言った。
「茜は、本当に前しか向いてないよね。」
優しくそう言ったが、内心は呆れていた。
「当たり前じゃない?前以外どこ向いて歩くの?ねえねえ。」
無邪気な少女。その言葉が茜には良く似合うなと思った。
茜が、音楽で生きていくのはきっと無理だろうと思った。ただ僕はそれで良かった。茜が有名になるなんて考えられなかった。想像してみたら何故だか胸が苦しくなった。
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