藍色

うみま

第1話 僕ら

「あたし、前より今の方が生きてるって感じするわ。」

東南高校を、10月31日に自主退学した加賀 茜は言った。

「そんなこと言ってられるのも今のうちだよ。」

加賀 茜は退学してからまだ1ヶ月程度しか経っていなかった。僕は、加賀 茜は社会を甘く見ていると前々から思っていた。

そうでなければ高校3年の後半に自主退学なんかできるわけがない。

「まあ、何とかなるよ。自分で決めたことだし、何とかする。てか啓介はさ、高校卒業したら何するか決めてんの?」

「いや、普通に大学は行くでしょ。そこからは普通に就職するよ。多分。」

「普通って何?」

と茜は嘲笑うかのように言うと、

「啓介は「普通に」と「逆に」って言うの口癖だね。」今度は純粋に微笑んでそう言った。

加賀 茜は優しかった。それは種田 啓介にとって加賀 茜が切り離すことの出来ない存在としている意味のひとつだった。僕らは時々励まし合い、言い合いをし、そしてセックスをした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る