幼女転生さもりりす!

さも☆りん

第1話 さもりりす!転生です! 

 端的に云うと私は異世界に転生しました。


 みなさん、おわかりだと思うので簡単に済ませます。私は日本に住んでいました。高校生でした。いや、大学生でも社会人でも別にいいのですが…。ただ、社会に何かしら不満を抱いていたのです。学校に馴染めない、仕事がうまくいかない、彼女がいない、などなど…(あなたの想像にお任せします。)

 そしてある日、トラックに轢かれて死にました。いや、死に方だってなんでもいいのです。通り魔に襲われてもいいし、爆発してもいい…。最近は異世界転生の条件も多様化して、必ずしも死ななくていいようです。まぁ、とりあえず死んだということにしておきましょう。その後、神の声を聞きました。そして、異世界へ転生する前にチート能力を授かりました。


 気が付いた時、私は二段ベッドの上の段で、仰向けに寝ていました。体を起こし、あたりを見渡します。6畳半くらいの部屋でした。

 部屋には木製の扉が一つあり、扉が付いている壁の反対側の壁には大きな窓が付いていました。扉も窓もついていない二つの壁に沿うように木製の二段ベッドが一つずつ置かれています。私は扉から見て左側の二段ベッドに寝ていたのでした。

 反対側のベッドの上段には誰も寝ていないようです。下の段には赤い髪の毛の少女が寝ていました。こちらに顔を向けて居ないので年齢はわかりませんが、身長と身体つきから察するに十歳くらいでしょうか。

 一体ここはどこだろう。私はどんな姿に転生したのだろうと考えていると、私の真下から声がしました。

「さもりりすちゃん。起きてるの?今日は早いね。」

 私は声の主の姿を確かめようと、ベットから身を乗り出して下の段を覗き込みました。明るめの茶色い髪の毛を肩まで伸ばした、垂れ目で十歳くらいの少女がベッドの端に座ってこちらを見つめていました。愛嬌のある丸顔で、形のいい鼻の周りにはそばかすが散っています。少女は純粋な眼差しで、こちらをみつめたまま言いました。

「どうしたの?さもりりすちゃん?」

「すまない。私は今、他の世界から転生してきたところで、この世界の事は何も知らないんだ。ここがどこか、私が誰か説明してもらえないだろうか?」

「え?転生?」

「そう。転生。」

 私は質問した後、しまったな、と思いました。我ながら意味の解らない質問だったからです。変な奴だと思われて、これからの生活に支障が出るかもしれません。この部屋の雰囲気から察するに、これから私はこの四人部屋で、二人の少女と共同生活をしなければいけないのです。

 しかし、茶髪の少女はどこまでも純粋でした。

「それは、大変だね。貴方はさもりりすちゃんだよ。ここは、さもり帝国諜報部管轄初等教育学校の宿舎なの。私たちはルームメイトなんだよ。」

「そうなのか。恩に着る。」

「でも、貴方が転生してさもりりすちゃんの身体に入ったなら、もともとのさもりりすちゃんの魂は何処へ行ったのかしら?」

 確かにそれは重大な問題でした。私がさもりりすちゃんの身体に転生しているという事は、もともとのさもりりすちゃんの魂を押し出して、私の魂が彼女の身体に入ったという事なのでしょう。しかし、もともとの魂は何処へ…?まさか、消滅?

「わからない…それについては神様が説明してくれなかったんだ。」

「神様?」

「私を転生させた存在だ。神様は一言「使命を果たせ!」といって、私をこの世界に送り出したんだ。」

「神様ってもしかして、さもり神様かな?」

「さもり神?」

「私達の神様だよ。さもり神様に会ったなんてすごいねぇ、いいなぁ。」

 心からうらやましそうな表情を浮かべて、彼女は言いました。彼女の抱いていたさもりりすちゃんの魂の行方への関心はどこかへ行ってしまったようでした。

「いや、会ってはいないんだ。声が頭に響いただけなんだ。」

「つまり、あなたは預言者ってこと?」

「預言者?」

「神様の声を聞ける存在のことだよ。」

「そうかもしれない…」

 私は、下段の少女があまりにも純粋なので心配になってきました。友達が突然「私、転生してきたんだ。」と言い始めたら、普通の人間はドン引きするものなのではないでしょうか。少なくとも、私だったら友達をやめます。

 「しかし、」と私は思いました。ここは異世界なのです。私が以前生きていた世界とは違うのです。もしかすると、ここの住人は皆、素直で純朴なのかもしれません。素晴らしいことです。

 その時、もう片方のベッドから、イライラした調子の声が聞こえてきました。

「さもりりす!さもりりあ!朝っぱらから馬鹿な話してんじゃないよ!うるさすぎて起きちゃったじゃんか!」

 その声を聞いて、私は少し安心しました。

 よかった。今の会話を「馬鹿な話」と評してくれる住民がこの世界にもちゃんといるんだ。

 

 

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