とにかく驚いた。
何が驚いたって、この作品の世界観だ。
物理法則に則った理論の構築によって、物語世界を設計している。
まて、物理? そんな生易しいものではない。
数学に化学に生物学に天文学に……量子論にまで言及していた。
「魔法」を「都合のいい奇跡」とせずに、その法則や原理を現代科学とプログラミングに置き換えて、明快に解説して行く様はまさに圧巻。
これは物語であると同時に、壮大な『設定集』と考えていいだろう。
むしろ『設定集を小説として昇華させたもの』と言っても決して過言ではないと思う。
今までこのような切り口の小説があっただろうか。これはもしかすると、新たな小説の形態として確立するのでは……という予感さえ。え。え。えええ?
ところで。
あなたは自分がプログラムされた存在でないという確証はありますか?
この物語は異世界転移ものであり、VRであり、SFでもあります。あと可愛い女の子がたくさん登場します。
要素がかなり詰め込まれたエンタメ小説ですので、どれか一つでも好きだと思えるものがあるのなら、ぜひ読んでいただきたいです。
また、設定がかなり作りこまれているので、異世界物を書きたい、或いはSFを書きたいと思っている書き手側の人にもお勧めしたい作品です。
読み進めていくと次第に、その世界が本当にあるのではないかと錯覚し、ここで起きている問題を他人事のようには感じられなくなります。なんたって可愛い女の子がたくさん出てくるわけですから、助けたくなるわけですね。
また魔術発動に対しての構造が明確になっており、
「もしかして私もプログラミングを勉強すれば、魔術を使えるようになるのではないか」
と、そう錯覚してしまいます。そしてこの錯覚こそが、フィクションの醍醐味だと私は思います。
さらに作中で語られる「認識」の概念をお借りして言うのならば、この「錯覚が現実でないこと」の証明はできないわけです。
だとすればこの世界は本当にあるのかも知れない。
しかし認識した人間でなければ、この世界の存在を認めることはできない。
ならば、あなたもこの世界に入って魔術を会得し、世界を救ってみませんか?