布団が吹っ飛んだ
倉田京
布団が吹っ飛んだ
布団が吹っ飛ぶ直前、私は確かに彼の声を聞いた。それは消え入りそうなほど小さく、抱きしめたらバラバラに壊れてしまうんじゃないかってぐらい
「ぼくのこと、忘れないでね…」
空へと舞い上がっていく布団。もう、会えないの?心の中に彼との思い出が沸き上り、涙となって
いつも私の
行かないで布団。突然すぎるよ。あなた無しで、私はこれからどうやって生きていけばいいの?
私は布団の名を叫んだ。
布団はアパートの狭い庭に『く』の字で落っこちていた。私はサンダルを履いて、駆け足で彼を迎えに行った。そして倒れていた彼を抱き起し、雑草と湿った土を指先でそっと優しく払い落としてあげた。
私はその場で布団を優しくギュッと抱きしめ、その柔らかさを頬で確かめた。
「どこにもいっちゃダメ…ずっと一緒だよ……」
いつもの彼の感触。ほのかに、お日様の香りがした。
布団が吹っ飛んだ 倉田京 @kuratakyou
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