第13話 未来に訪れるかもしれない人類破滅の日。 END

               あらすじ


 穴の底に置き去りにされたのかと思った俺は、穴の底を走り回った。

 しかし全然登れそうな場所は見つからず、俺は一周して元の場所へ戻って来た。

 戻って来たのは良いのだが、気絶していたレシュトリアは目覚めてしまっている。

 俺は一応戦闘体勢を取るのだが、向うには戦う意思はみられない。

 彼女と会話すると、合体して誰も死んでいないから怨んでいないと言っている。

 俺との合体まで望むレシュトリアだが、俺は誰も居ない穴の底で周りの状況を見て思ったのだ。

 理性って何って! レシュトリアの体に迫る俺だが、空中から飛び降りて来たフレデリッサ(恋人)により飛び蹴りをくらってしまったのだった。

 結構怒っていたフレデリッサに踏みつけられ、ちょっとピンチになってる中で、フレデリッサを抱えて飛んできたべノム隊長がレシュトリアと話し始めた。

 二人の話は彼女の今後どうするかというものだったが、レシュトリアは人の中で生きたいと言っていた。

 ある程度納得した隊長達は、穴の上へと脱出し、何故か俺だけが穴の中に残されてしまうのだった…………


バール(王国の兵士) レシュトリア(バールの娘と名乗る少女)

フレデリッサ(バールの恋人)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 俺が穴に放置されて七日目。

 たまに襲い掛かって来る鳥の魔物キメラと格闘したり、虫の魔物と激戦を繰り広げたりと、それ以外に何もやる事がなくて、もう暇死にしそうになった頃、やっとの事で隊長により穴から助け出され、無事王都へと帰ると、フレデリッサにより迎えられた。


「お帰りなさいバール。この数日ですけど、意外と寂しかったのですよ」


「そりゃあ俺だって寂しかったさ! 一週間も、一ッッ週間も我慢させられたんだからな! さあフレデリッサ、俺の欲望を吐き出させて貰うよ!」


「ちょ、ちょっと! 貴方、娘の事は放っておいてよいのですか?!」


「そんなのは後回しだ! 俺が今求めているのは…………フレデリッサ、君だけだ!」


「あらまあ、それは嬉しい事を言ってくれますね? でしたら、好きなだけして行きなさい。ただし、今後はもう私だけにしておきなさい。後悔はさせませんわよ?」


「ああ、そうだな、それも考えておくよ…………」


 今まで溜っていた色々な物を吐き出させてもい、その際「私だけにしておきなさい」なんて言われてしまうと、七日間の禁欲生活の為に、一瞬それも有りかなぁと、俺ではあり得ない感情が沸きあがってくるのだった。


 まあそれで色々とスッキリした俺は、レシュトリアの事が気になり、彼女の元へ向かっている。

 彼女は今研究所で色々と体中を調べられて、この国の、というか、人のルールを学んでいた。

 面会は問題無いということで、俺は検査をしている所を見ている。


「あっ、パパ、生きていたのね。もう少しで終わる時間だから、もうちょっと待っててね」


「元気そうで良かったよ。じゃあ待たせてもらうから、頑張ってね」


 今の状態を見ると、特に問題無く暮らしているらしい。

 研究員に聞いた話では、レシュトリアは人とは違う構造をしていて、脳も心臓さえないという。

 血すら通っていないというのだから、その生態は謎に満ちている。

 そんな状態だというのに、人との生殖が可能だと言うのだから驚きだった。

 まあ彼女の母親がスライムで、それと生殖したのだから不思議ではないかもしれないが。


 で、その方法が特殊なのだ。

 人のたねを軸として、分裂したスライムがそれに近く変異するというもので、それは本当に俺の子なのかと疑うレベルだが、スライムとしては子供には違いないのだろう。 


 だが百年、千年の時が経ち、彼女の子供が王国中を覆い尽くした時に、それが本当に人との子供なのかというのも疑問が残る話だった。

 そして更に状況が悪化して、彼女の子供達が世界を覆い尽くしたら、人間という種は滅びているのかもしれない。


 千体もの子供を作った彼女の母親の事もある。

 そうなっても不思議ではない話だ。

 結局彼女の母親を選んでも、彼女を選んでも、そして選ばなかったとしても、何一つ変わらないピンチだということだろう。


 …………例えそうだとしても、レシュトリアに止めを刺せなかった俺が今更言える事でもない。

 後はこの研究員達に任せて、俺達は平和に暮らして行くとしよう。


「パパ、今日の検査は終わったわよ。じゃあ何処かに遊びに行きましょうか」


「ん、そうだなぁ。じゃあ町を見て回るのも良いかもしれないな。レシュトリアは、まだこの国の中を知らないだろ?」


「そうね、じゃあ案内してもらいましょうか。パパ、ちゃんとエスコートしてね」


「ああ、任せといてくれ。女の子をエスコートするのは俺の得意分野だ」


 時々フレデリッサからの視線らしきものを感じながら、町の中をプラプラと見回って行く。

 そして俺は人類とスライムとの大戦争なんて起きないで欲しいなと思いつつ、この物語は終わるのだった。



               END

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兵士バール大魔王になりかける。 秀典 @kurokoge

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