第12話 レシュトリアの進む道。
あらすじ
スライムの中から脱出した俺は、このスライムをどう攻略するのかと考えた。
無茶な方法しか思いつかなかった俺だが、もうそれを実行するしかなさそうだった。
俺は相手の表面を槍で削り、その体積を減らす作戦に出たのだが、百回やってもちっとも減って行かない。
二百回に達した頃、これじゃあもう全然無理だと思い直し、スライムの体内で槍の角度を変えて弾き飛ばす事に成功し、五倍位の効果をあげるのだった。
壱が五になった所で万には程遠い。
頑張って斬り続ける俺は疲れながらも千回にまで到達するのだった。
すんごい疲れた俺だけど更に頑張り切り続け、千五百回にまで到着するのだが、まだ敵の体は大きく残されているのだった。
人のサイズ程に残されたスライムに、後一回だけ頑張ろうと蹴りで斬り付けた俺だが、体力の限界が来て倒れてしまう。
殺すなら殺せと倒れ続けた俺だったのだが、このスライムは一向に攻撃をして来なかったのだ。
充分に休んだ俺は、スライムが死んだのかと触ってみると、その体が弾けて中からレシュトリアが現れるのだった。
これでもう全部片付いたと上にいそうなフレデリッサとかに叫んでみるのだが、一向に返事が来なかった…………
バール(王国の兵士) レシュトリア(バールの娘と名乗る少女)
べノム(王国の兵士) フレデリッサ(バールの恋人)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「俺まさか……見捨てられた…………?」
有り得ない!
この優秀な伝令役であるイケメンがそんな事になるなんて、絶ッッッ対にあり得ない!
いや待て、実は
だってレシュトリアが
まずは探してみよう!
「出口は何所だあああああああああああああああ!」
全力で走り、とんでもなく広い穴の底を一周してみるのだが、そんな場所は発見出来なかった。
ただ疲れただけだと理解した俺は、肩を落としてとぼとぼと歩いていると、倒れて居たレシュトリアが目を覚ましたらしい。
サササっと距離を取り、一応戦闘体勢に移行したのだが、レシュトリアは俺に襲い掛かって来ない。
「パパおはよう」
「…………うん、おはよう」
一応答えはしたが、まだ信用してはいけない。
戦闘体勢は維持したままで、レシュトリアの動きを観察している。
「心配しなくてもいいわよパパ。私達にもう戦う気はないの。パパの強さは分かったし、戦って殺しちゃうより人間の中に入っちゃった方が良いんじゃないかって結論が出たのよ」
「そうなのか。じゃあレシュトリア、一つ聞きたいけど、君の母親は死んでしまったのかい?」
「違うわ、私達は一つになったの。ママは私で私がママになったのよ。だから誰も死んではいないわ。」
「そうなのか。それならまあ……良いのかなぁ?」
「だからねパパ、私達はもっと人に近づきたいの。パパの手で人に近づかせて。もっと人間の遺伝子をちょうだい。さあパパ、私の中にいっぱい欲しいの」
服を脱ぎだすレシュトリア。
中に欲しいというと、まさかアレの事か?!
「な、何を?! 俺達は親子だって言ってただろう?!」
「大丈夫よパパ、そんな事を気にするのは人間だけだもの。私達はそんな事気にしないから。さあ、いっぱい子供を作ってちょうだい。その為に私が残ったんだから」
もう完全な女の体になったレシュトリア。
正直ニ日ぐらい会っただけで、親子と言われてもピンと来ないし、女と見てしまう俺が居る。
この場には裸の女、誰も居ない大地、俺の理性。
理性って何?!
「…………いただきま~す!」
「そんな事をさせると思っているのですかッ、この馬鹿者があああああああああああ!」
「ぐぼああああああああああああああ!」
楽園に飛び込もうとした俺の顔面に、空中から現れたフレデリッサの強烈な蹴りが炸裂した。
如何やって来たのかと見ると、隊長に掴まって下まで降りて来たらしい。
何故こんなタイミングでと、悔し涙を流す俺に、更に頭を蹴り付け、容赦なく踏みつけて来るフレデリッサ。
「自分の子供にまで手を出そうとする馬鹿が居るものか! この馬鹿男! この馬鹿男! この馬鹿男!」
「待ってくれフレデリッサ! まだ彼女が俺の娘と決まった訳じゃないし、違ったなら何の問題も無いと思わないか?! 俺達は男と女なんだ、そんな事があっても不思議じゃないだろう!」
「問題あるに決まってるでしょうが! 女と言えどあれは
「ぎゃあああああああ、許してフレデリッサ、ちょっと気の迷いがあっただけだからああああああ! あああああ見てないで助けて隊長! このままでは俺が死んでしまいます! 部下のピンチです、手を貸してください!」
「いや知らんし。お前はあれだ、もうちっと大人しくしてろや。 …………それよりお前だ。あ~、レシュトリアとか言ったか? お前は本当に人の中で生きるつもりか? 人を襲わないと
「私達は生き延びられて繁栄出来るなら何でも良いの。人を食べたいという欲求は確かにあるけど、それだて全てじゃないわ。別に必ず食べなきゃ生きて行けない訳でもないし、我慢すれば良いだけの話よ」
「そいつはちょっと微妙な話だな。お前がこれから子孫を残すなら、そんな奴も出て来ねぇとも限らねぇって事だろ? 確かに起こるかどうかも分からねぇ話だが、わざわざ可能性を増やす必要はないと思わねぇか?」
「何を言っているの? パパだって変身してたじゃないの。あの姿が人にとって危なくない訳が無いわよね? 私達が人を襲うのと、パパが人を襲うの、どっちが可能性があるのかしら? ねぇパパどっちなの?」
「いやぁ、その時は全く記憶がなくって、全然覚えがないんだよねぇ…………」
「…………確かに、この馬鹿がまたキメラに手を出す可能性は限りなく高いな。今の内に抹殺しといた方がいいのかもしんねぇ。逆にこの子を連れて帰って、バールを置き去りにするのも有りかもな」
「何言ってるんですか隊長! そんな事になったら、王国中の女性が涙を流してしまうじゃないですかあああああああああああああ!」
「ふん!
股間の辺りを蹴り飛ばされ続ける俺は、大人しくフレデリッサに従う事にした。
「じゃあレシュトリア、確認の為にもう一度聴いとくが、本当に約束出来るんだよな?」
「ええ勿論よ
「俺の相手はもう居るんだよ。少し問題がありそうだな。知識を与えれば改善するのかこれ? 王国に住むにしろ、お前には一度教育を受けて貰わないと困りそうだ。じゃあ順番にこの穴から上げてやるから、大人しくしていろよ?」
レシュトリアが
隊長がフレデリッサを連れて穴の上空へと消えると、再び戻って来て今度は俺の番だと手を伸ばした。
だが何故か俺の手はスルーされ、敵であったはずのレシュトリアの手を取るのだった。
「あれ隊長、まさか俺を置いて行くつもりじゃないでしょうね? ね?」
「安心しろ、食事は運んで来てやる。お前はちょっと反省してろや。じゃあなバール気が向いたらだしてやるぜ」
「パパまたね」
「た、隊長、待ってくださいいいいいいいいいいいいい!」
スイッっと上空に消えて行く隊長とレシュトリア。
そして俺は本当に放置され、この穴の中に一週間も過ごす事になるのだった。
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