第22話 全競技終了! 優勝は――


「アメリアさん! 良かった、ご無事で!!」


 涙で顔をくしゃくしゃにして抱き付いてきたルーを、アメリアは両手を広げて抱きしめた。

 六大陸を存続させる魔法が成功して、すぐにアメリアは闘技場に戻った。

 まだ津波が引いていないので、人魚形態で最高速で。

 因みに男どもは置いてきた。

 UFOが見れて、大満足の大和になぜか礼を言われたが、……礼を言いたいのはこっちである。


「ごめんね、ルー。あんなひどいことをして本当にごめんなさい」


 ルーの傷は、すっかり癒えていた。アメリアの言っていた実験とはこれのことだ。

 ルーの点滴パックに自分の血を混ぜた。

 もし、本当に不老不死にならなくても、わずかでも傷が治ればとの思いだったが……想像以上に効果があったらしい。勝手なことをしていると思うが、これでひとまず安心だった。


「あの、六大陸戦争はどうなりましたか?」


「あぁ、あの子たち~、力づくで解決したわ~。でもうまくいってるんだから、本当に腹立たしんだけどね~」


 本当に度肝を抜かれたものだ。

 まず、大和たちは、神殿の五大陸プレートを入れると自動的に閉まる台座に、同時に六大陸ぶち込んだ。

 台座が判定のために、一瞬六大陸全部を受け入れた刹那に、今度はその台座ごと六大陸を生贄にブラックホールからUFO召喚。

 更に、生贄の対価に六大陸が破壊される刹那に、UFOをブラックホールに還した。六大陸は壊されずに済んだ。

 台座にぶち込んでからのこの間、0.00000000001秒。神業だった。

 六大陸を収めたプレートはどうなったかって――?


 ブラックホールに吸い込まれていった。召喚にクーリングオフはないらしい。もうこちらからは手の出せないところにいってしまった。

 ――そしてブラックホールの中では、時間が停止する。


 だから、あの五大陸しか納められないはずのプレートは、六大陸を納めたままブラックホールの中にあるのだろう。

 だから、六大陸はいまだに世界にある。この魔リンピックが終わってもずっと。


 アメリアは詰めていた息をついた。

 何もかもの願いが叶った世界――幸せなのに、まだ混乱が収まらなかった。だが生きている。

 ルーは説明を聞いてもきょとんとしている。

 くすりと、アメリアは笑った。


 ――そうまだ、時間はある。これからの事が考えられるだけで、幸せだ。

 アメリアは、見上げてくるルーの頭をくしゃくしゃと撫でながら、世界を救ってくれた英雄たちを世界中に自慢したい気持ちでいっぱいだった。


 魔リンピック――全競技終了。

 優勝:五大陸代表連合(国連超常現象局アメリア班)

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アトランティス魔法オリンピック 北斗 @usaban

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