第21話 我儘な男たち


「……何言ってんすか?」


 大和はきょとんとした。シドニーも頷いている。


「え? 六大陸目を沈めないと、あなたたちの大陸が沈むって言ってるんだけど……おかしかったかしら」

「おかしくはないですけど、俺、UFOが見られないなら世界とかどうでもいいんで」

「俺も姐御が借金返してくれないなら、世界なんて無くなったほうがいいんで……」


 わかった、おかしいのはこいつらの頭だ――。

 アメリアは頭痛を覚えた。


「報酬の約束果たせなくて悪いと思うわ~。でも優先順位ってものがあるじゃない。まずは自分の命でしょう? 大陸沈んだら、あなたたちも死ぬのよ~。人魚にもなれないでしょうし」


 ふたりして、そっぽを向いた。聞く耳持たないと言いたいらしい。


「「つーん」」

「……わかったわ。ならどうするのかしら~」

「もっと欲張って、六大陸全部存続させて、UFO呼んで、姉さんにシドニーの借金を返してもらいます。あと、ルーも、姐さんがいれば、どうでもいいって言ってたし。……ほら皆ハッピー!」

「んだんだ」


 ……本当に頭がおかしかった。一体誰がこうしたんだ。……私か?! 私のせいか?!!

 アメリアはもう本当に色々混乱して、混乱して、混乱しすぎて――、

 ……一気にどうでもよくなってしまった。


「私は手伝えばいいのね~。もう、好きにしてちょうだい」


 二人は、ぱぁああっと顔を明るくして、ハイタッチした。


「「いええええい! これでバラ色ハッピーライフ!」」


 成功を疑ってないらしい。……バラ色でハッピーなのは貴方たちの頭じゃないかしら、とアメリアは切に言いたかったが、我慢した(えらい)。


「ガキタレ共、言われたとおりに山中に魔法陣描きまくったぞ。……しかしこれ、何の陣だ?」


 森から、ガサリと現れた男にアメリアは瞬きした。あぁ、この人が三人目か――。

 当の男はアメリアが起きているのに、一瞬顔をこわばらせたが、ため息をついて同情したようにアメリアを見つめた。

 ……あぁ、この人お人よし過ぎて、この二人にうまく使われるタイプだ。

 アメリアこそ、心底同情した。この二人に知り合って、この人がこれから背負う苦労は私の比ではないはず。お人よしの悲しさである。

 ――アメリアは、いろんな思いを込めてにっこり笑った。

 男は戸惑ったようだった。


「さんきゅー、おっさん。腹の怪我の具合はどないや?」

「……なぁ、なんかお前らが無理やり口に突っ込んできた血、舐めたら怪我が治りだしたんだけど、……ヤバいものじゃないよな、あれ?」

「フェニックスの血だから大丈夫だぜ」


 しれっと、大和が答える。男は、疑い深そうに見ていたが、頭を掻いて軽く流すようにしたようだった。

 シドニーが無邪気に耳打ちしてきた。


「良かったな、姉御。俺らも実験したんやけど、成功みたいや」

 

 まさか、その血って……。

 アメリアは、男に心底同情した。色々諦めた方がいいかもしれない。

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