失恋の。

ないに。

いつもの天井で、いつもの壁で。




 10歳、将来はお嫁さんになるんだと無邪気に考えていた。


 20歳、恋愛から遠い自分に気がついて、それでもいつかはと思っていた。


 25歳、節目だなと思って、でもまだ大丈夫だと思ってたんだ。


 ……30歳、もう無理だろうなってあきらめた。



 気が付くと、私はそこでぼんやりしていた。

 よく覚えてないんだけど……たぶん私はうっかり死んじゃっててさ、それでもって神様っぽい何かが私に言ったんだ。


「何歳に戻りたい?」


 だってさ。

 これが神様のお告げってやつ? あり得なさすぎて、笑っちゃう。

 私は、答えたんだ。


「戻りたくない。お願いだから、このまま死なせて」


 そしたらさ、神様? がすんごい笑顔になっちゃって。

 私は、目を覚ましたんだ。



 いつもの天井で、いつもの壁で。

 壁には、赤いランドセルが吊り下げられていた。



「最悪……」

 10歳からだなんて、ひどいよ。


 これからまた長い長い、20年が始まる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る