「お姉ちゃん……」
勉強をがんばったってことで、中学受験して近所の私立へ進学することになった。
これで、一度目……前世? みたいに公立中学でひそひそされなくなると思ったら、合格発表を見て大泣きしちゃったわ。一度目ではほんっとに冗談じゃなく暗黒の中学生時代だったから、もうあんな思いをしなくても良いのかもと思うと嬉しくてたまんなくなった。
だってさ、中学上がったら校区が広くなるし普通は人間関係がリセットされるんじゃないかって思うじゃん? 期待するじゃん?
……違うんだな、これが。前世での登校初日、すでになぜかクラスメイトたちからちらっちら見られながら、だーれも私に話しかけてくんないの。話しかけようとしたら変な半笑いで逃げられるの。一度目の中学生な私は、ずっとずっとそんな感じでぼっちだったのよね。
原因がわからなくて初めは心臓がばくばくしてたけど、ある日クラスの女の子たちが例の告白事件からの私の素行らしきものを語り合っているのを聞いちゃって、ああそうか、またかってひんやりした気分になって落ち込んだのを覚えている。
特に辛かったのがグループ単位で行動を強いられる音楽や体育の時間で、こう……同じグループの子たちに申し訳なくてさ。私なんかと一緒でごめんねってずっと心の中で謝ってたっけ。まあ、さすがに声に出しては謝ったりしてないのだけどね……。
そうそう。実は、私には妹がいたりなんかしてさ。これがまた、小生意気で頭の出来が良いんだよ。
一度目の時は、小さい頃はお姉ちゃんお姉ちゃんって後ろを付いて来たりしてたのに、そういえばいつの間にか姉妹の間で会話がなくなってて、私は二度目の人生でそのことに初めて気が付いた。
だってさ、よく考えたら私は幼なじみ三人で登下校してたし、妹は妹の友達と登下校していたから一緒しなかっただけで、家族なんだから普通に通学路は同じなんだよね。
こんな大事なことも見えないくらい自分の中に閉じこもってたんだなあって思ったら、情けなくなった。
てことで二度目の小学生では、放課後の時間つぶしが上手くいかなかった時は妹を利用させてもらうことにしたんだ。実はお姉ちゃん子な妹は、妹の友達が引くくらいに喜んでて、こんなに妹が喜ぶのなら一度目でもこうしたら良かったなあと思ったりした。
姉としては情けないけど、でも家族と疎遠になるよりはずっと良いんじゃないかな。
頭が良い妹は一度目と同じように私立に進学するだろうから、今度は一緒に登校できるのだ。あの
「お姉ちゃん……」
いつも減らず口ばっかりで生意気な妹が、私の服のすみっこを掴んで放さないとか可愛い。
どうしよう。
私はそのうち萌え死ぬかもしれない……。
「
菜央はまだ、9歳だ。私とは3歳違い。精神年齢だとすでに親子くらい離れているから可愛くってね。つい構っちゃう。
一度目の時はたぶん私がひねくれて無視してるうちに縁が切れちゃったから、今度はがんばってみようと思う。
「真央、近所だからって油断してると遅刻するわよ」
「あ、はい!」
キャリアウーマンのお母さん。
私の両親は共働きで、妹は妹ってだけで両親に甘えられたけど、私はお姉ちゃんだからそうもいかなくて、いつも寂しかった。
だけど、一度目で社会人になって30歳を経験した今なら、お母さんの大変さがよくわかる。
だって今、お母さんの年齢は35歳だ。私が二度目を繰り返す前とたったの5歳しか違わない。
前世では、私はお母さんに反抗ばかりしていた。実は今もちょっとだけ反抗しているけれど……でも、一度目とは違って私は家事を積極的に手伝うことにした。だって働いてたら家事ってすごい面倒くさいんだよね。仕事帰りにちょっとした家事をしなくて良い幸せといったら、もう……。
洗濯をするようになって、簡単な掃除をたまにするようになって……そしたらさ、苦手だった料理までできるようになったのにはびっくりしたよ。私って料理音痴じゃなかったんだなって。そのうちお嫁さんになれたら役立つと良いな。
一度目で通った公立中学校は給食だったけど、今回通うことになった私立中学校は給食がなくてお弁当を持って行くか学食で食べることになるから、私は自分でお弁当を作ることにしたんだ。
ねだられたからって、ついでに菜央の分もお弁当を作ることになって、そうしたらお父さんとお母さんも物欲しそうに私を見ていたから、結局私は予算をもらって家族全員分のお弁当を作ることになった。
小学校は給食があるはずなんだけど、菜央は毎朝食べるんだってごねまくってておもしろ……いや、可愛かったな。
さて、今日から二度目の中学生だ。
「いってきます」
いざ、出陣!
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