ロボットの子供達

nobuotto

第1話

 地球の遥か彼方の星で、ロボット達は人間の代理戦争を続けていた。しかし、人間世界では、ずっと昔に平和条約が結ばれ戦争は集結していた。そしてロボットも星も忘れさられていた。

 *** 

 全身が黒いのでブラックと呼ばれているマックスは、ずっと敵を探し続けていた。行けども行けどもロボットの残骸ばかりの星を歩き続け敵のロボットを探していた。戦うことだけがマックスの存在理由であった。

 星中を歩き回り、マックスは最初の戦場に帰ってきた。

 そしてとうとう、探し続けた敵、全身が赤いレッドがいた。

 マックスは飛ぶようにレッドに向かって行った。レッドもマックスに気づいたようである。しかし、戦闘体制を取って近づいてくるマックスにレッドは立ったまま動く気配もない。

 マックスが思い切り殴りつけるとレッドは大きな音を立てて崩れ落ちた。反撃に備えているマックスだったが、レッドはそのまま動こうともしない。たった一撃で破壊できるタイプのロボットではない。マックスは高く飛び上がり、全体重をかけて腹めがけて落ちた。

 レッドは動かない。長い間探し続けた敵がこうも簡単に倒れてしまうのか。戦うことに飢えていたマックスは何度もレッドの背中を殴り続けた。レッドは手足を少し動かすだけで立ち上がる様子もない。

 その時、どこからか小さな三輪ロボットが次々と現れて、マックスの前に並んだ。まるで、レッドを助けてくれと言っているようである。自分の敵ではない、攻撃を仕掛けてこないロボットとマックスは戦うことはない。

 三輪ロボット達に囲まれていたレッドがゆっくりと立ちがってきた。両腕はもげ、まっすぐに立っていることもできない。こちらにゆっくりと歩いてきた。

 マックスは再び戦闘態勢に入る。

「あなただけになりますよ」

 どこからか声が聞こえた。

 三輪ロボットを蹴散らし、顔面めがけて投ぐりつける。レッドの顔が破壊されて飛んでいく。これで完全にマックスの勝利である。

 三輪ロボット達がもう動くことのないレッドの回りを何重にも囲んでいる。

 戦いが終わったマックスは、その光景を静かに見ていた。

 三輪ロボットは、この星でよく見る動物とそっくりであった。レッドは敵を探して戦うことをやめて、戦闘ロボットの残骸から動物達を作っていたらしい。戦いのために作られたロボットなのに、レッドはどこかで自分の役割を放棄したに違いない。

 マックスは次の敵を探したが、見つけることはできなかった。このレッドが最後の敵なのだろう。これでマックスの役割は終わったのだった。

 大きな岩にマックスは座った。この星に来て初めてマックスは座った。

 そこに三輪ロボットが集まってきた。邪魔だと払い除けても払い除けても三輪ロボットは集まってきた。

***

 長い時間が過ぎた。三輪ロボットの種類は増えていた。敵と戦うことができないマックスはレッドと同じように、ロボットの残骸で三輪ロボットを作り続けた。もう戦闘ロボットの残骸よりも、星を走り回る三輪ロボットの方が多くなっている。三輪ロボットは、いつもマックスの周りに集まっていた。

 その時、遠くで三輪ロボットの悲鳴と破壊される音が聞こえた。それがだんだん近づいてくる。レッドがこちらに走ってくるのが見えた。マックスが倒したレッドではない。まだ敵がいたのだ。マックスの回路が動き始めた。また敵と戦える。

 しかし、マックスは戦うことができなくなっていた。レッドに顔面を殴られたマックスは宙に浮き、叩きつけられるように地面に落ちた。マックスはゆっくり起き上がった。そして、戦闘態勢を取って向かって来るレッドに構うことなく、下敷きになってしまった三輪ロボットを抱きかかえる。レッドが背中を殴り続ける。それでもマックスはレッドと戦かおうとはしなかった。マックスは、自分の回りに集まってくる三輪ロボットと一緒に修理の部品を集めようとしたが、片方の腕がもげてしまったので、うまく集めることができない。

 自分の倒したレッドがあの時何を考えていたか、今のマックスはよくわかった。

 マックスの前にレッドが立ちふさがった。レッドの周りを三輪ロボットが囲んだ。

 レッドは三輪ロボットを蹴散らし顔面に向けて手を振り下ろしてきた。

 顔面に近づいてくる大きな拳を見て、マックスは言った。

「これで本当にあなただけになりますよ」

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