タイムマシンで未来人がやってこない理由・製作可能な前提での別解

curuss

§

◎我々は動いている


 何もしないで立ち止まっているつもりでも、我々は動いています。

 有名どころが地球の自転!

 これは緯度によって変わりますが、なんでも日本だとマッハ1超!


 これを使った有名な技が、一方通行くんのビルパンチでしょう。

 ベクトルを操るという非科学的な超能力者である彼は、ビルに加わる自転のベクトルをゼロとすることで、ビルそのものを武器に!


※ 一方通行くんが非科学的な理由

 ずばり、彼の能力が成立し得ないからです。

 ベクトルというのは現象じゃなくて概念なので、操作できたら世界の法則が壊れてしまいます。

 もう少し噛み砕いていうと、ベクトルとは非実在の定義に過ぎません。数字などと同じ属性です。

 いまだかつて貴方は、実在する数字を見たことがありますか?

 ないはずです。なぜなら概念として成立可能であっても、実在し得ないからです。

 つまり超能力が不思議とかいう以前の話で「どんなに不思議でも、『無い』ものは操作できんやろ」となります。

 まあ、あれは作品的に――

「科学側の粋が、皮肉なことに魔術となっている」

 な意図がある……のかな?



◎でも動いているのは、それだけじゃない!


 公転があります! 忘れちゃだめです!

 地球そのものが太陽の周りをまわっています!


 その時速は約10万km!



◎まだまだ!


 太陽系そのものが銀河系の回転に組み込まれています!


 これが時速約86万km!



◎さらにさらに!


 これは計算不能なのですが――

 銀河系も大銀河群へ所属し、それも回転していると予想されています。



◎最後に!


 宇宙そのものが膨張しているので、移動と見做せます!

 これは風船の表面へ印を付けて膨らませると、観測者視点では印が移動しているからです。

 この膨張速度が――


 ぐぇぇ、時速約360万km!



◎で、最終的にどれだけの速度!?


 残念ながら推定すらできません。

 ベクトルの向きによってはお互いに打ち消しあったりも考えられますし、そもそも銀河群の回転速度が不明ですし。

 しかし、ほぼ確実にいえるのが――


 最低でも時速360万kmで移動しているということ!


(膨張の解釈によっては倍もあり得る……だったかな?)


 ちなみに、これは光速の300分の1ぐらいです(光速は時速10億8千万km)

 もはや宇宙工学で届くような数字ではありません。


 参考までに有人世界最速はマッハ33の時速3.5万km。光速の3万分の一程度となります。



◎よし、一秒だけ時間移動をしよう!


 ここで一秒だけ時間移動をしてみましょう。

 ………………うん?

 地球全体――いやさ宇宙全体が時速360万kmで動いているのだから――


 360万÷60÷60=1万km


 どこかへ向けて1万km移動してしまう!? 向かうのが過去でも未来でも!?


 参考までに地球の直径が12742kmだったりします!

 ついでにいうのであれば、大気の厚みなんて100kmもありません!


 地上に留まるのですら天文学的な幸運が必要で、おそらく2割が地球内部へ。残りの8割は宇宙空間でしょう。


 ……ちなみに2秒だと確定で地球の外です(苦笑)



◎この理屈は電車で考えると判り易い


 電車に乗っている人間が10秒前の過去へ移動した。

 すると被験者は先頭側の車両へ移動します。

 逆に10秒後の未来へ移動だと、後方にある車両へです。


 なぜなら時間移動と三次元移動は別だから。

 例えば駅を通過する瞬間に時間軸を動いても、三次元的には駅を通過中のままです。



◎地球上で時間移動しようとするから、いかんかったんや


 ……本当に?


 宇宙空間で1秒の時間移動をして、1万km先へ出現したとします。

(観測者にはそう見えるだけで、実際に動いているのは宇宙全体の方)


 そこから人類最速で戻ってくるのに約17分! その10倍でも2分弱!

 時間移動した意味なし!ww



◎1秒移動とか、むしろ逆に難しくないか?


 そして1秒だけ時間軸を動くのは難しそうに思えます。

 かといって長時間が簡単ともいえませんが。


 おそらく技術的に実現が楽な量――一日とか一年とか決まっていて、秒単位や万年単位は難しい。

 色々な科学技術から類推すると、そんなイメージです。

 つまり、時間移動可能だとしても、それなりの最低単位となるでしょう。



◎じゃあ、とりあえず10日ほど跳んでみよう!


 最低でも時速360万kmですから、10日だと――


 8億6400万km!ww


 地球~木星間が7億5000万kmなので、それ級の距離です!

 ……例によって人類最速でも、帰還に2年半かかる?



◎まてよ? これ時間移動じゃなくて、実質的なワープじゃないか?


 向こう側でも時間移動のシステムを作れば、往復も可能となります。

 なぜなら行きとは逆向きに時間移動すればいいのですから!


 木星周辺と地球周辺で10日のタイムラグが発生しますが、そんなの問題なし!

 移動する被験者には、連続した時間軸としか感知できません。


 ……時間軸というものが科学的に証明されて、その移動方法が確立すれば、論理的に成立し得るワープ航法!?

 もしかしたら人類初かも!? なんちゃって科学じゃないアプローチは!?


 たしか数学的に時間軸は立証されてる……んだったかな? わりとうろ覚え。

 まあ、作者自身は『時間軸は存在しない派』ですけど!(苦笑)



◎タイムパラドックス! おめえの出番だ!


 理屈的に過去や未来の自分と会うのは難しそうですが、それでもタイムパラドックスは起こり得ます。

 電波なら移動先から届くからです。

 地球~木星間の単位を直すと40光分なので、余裕で通信可能です。

 そしてそれは――


 どちらかにとっては、これから起きる未来の情報ということ!


 もちろん、その情報を元に改変を行えば、タイムパラドックスの登場です。

 思考実験的には面白いのですが、タイムパラドックスは物語を作る立場では困るだけだったりも。

 なので創作の世界では分岐理論が主流だったりします。



◎それに木星への移動にも使えません


 先ほどの電車の例えだと――

 地球を含む各惑星は、太陽が乗っている車両へ糸で結んだ凧

 の様なものです。

 車両内の移動に限定された時間軌道では、さすがに車外方向へ行けません。



◎でも! でも! タイムパラドックスすら無視できる距離なら!?


 電波は理論上無限に届きますが、距離に反比例して衰退もします。

 よって、どこかで事実上途絶える――検出不能となってしまう訳です。

 なので長距離を跳べば、面倒臭いタイムパラドックスともサヨナラ!?


 つまり、ざっくり1万年ぐらい跳ぶと?

 光速の300分の1で1万年ですから――


 33.33333……光年!


 一番近い恒星系のプロキシマ・ケンタウリで4.246光年!

 余裕で届くというか……わりと選り取り見取り!


 おお! 夢の恒星間航行!


 まあ三次元的な地球の現在位置に、過去か未来で通過した恒星系限定ですが。

(電車での例えだと「同じ列車に乗っていないと駄目」に相当。それにタイミングもシビア)


 この距離なら断絶できますが……でも、これって時間移動かなぁ?



◎しかし、三次元を移動する必要がある


 やはり片道切符を回避するのなら、スタート地点へ戻らねばなりません。


 ですが過去へ戻りたい場合、相当な制約が掛かります。

 まず大前提として、宇宙の膨張速度より早く移動できる必要があります。


 仮に膨張速度の倍で動けると――


 X年ほど過去へ移動。

 その後、0.5X年ほど三次元を移動してスタート地点へ。

 結果、実質的に0.5X年だけ過去へ戻れる。


 となります。

 つまりは移動速度が速けりゃ速いほど捗ります。

 が、三次元の移動速度は光速――膨張速度の300倍が限界です。


 仮に光速で三次元移動が可能で、100年かけて時間移動をしたとすると――

 1/300X=100で3万。

 これから帰還に費やす100年を引き、約2万9900年前が到達可能な過去となります。

 これは個の限界点でしょう。

(2020年から100年ほど時間移動に費やすと紀元前27880年に着くという意味)


 同じ前提で光速の半分だと1万4900年。

 光速の10分の一なら1400年。100分の1で200年です。


 でも、到達できるのか時速360万km超!?

 倍すら苦しすぎると思います。完全に工学の限界レベルでしょう(先ほどの前提で100年戻れる)


 ちなみに計算は省略しますが、三次元移動が膨張速度以下の場合、スタート地点へ戻るのは常に未来――つまりは過去へ戻れなかったとなります。


 未来方向は100年先へ到着するのに、体感時間で50年で済んだみたいになりますが――

 それってウラシマ効果でも可能です。科学的に確かと立証もされていますし。



★結論

 タイムマシンが開発されたとしても、三次元移動速度に制限される。

 なぜなら宇宙が動いているから。

 人類という枠組みや実現可能範囲で考えると、よくて50年の逆行が限界?


 世代交代型時間航海は可能?

 しかし、そこまでして過去や未来へ移動する意味は?



◎でもさぁ……これって、どれくらいの精度が必要なの?


 何度もいうようですが、1秒につき1万kmです。

 ここで大負けに負けて10日――±5日以内へ入れば、成功と見做すことにしましょう。

 誤差5日程度なら、地球から土星の間ぐらいに出現しますし。


 そしてタイムトラベルの基準値が一万年としたら――


 99.99986%以上の精度で成功させないと、被験者は宇宙の迷子!


 基準値が1000年でも要求精度は99.9986%!


 基準値100年だろうと要求精度99.986%!


 なんと基準値10年でも要求精度99.86%!


 基準値一年で、やっと98.6%


 ……日本人でもギブアップレベル? 



★結論2

 時間移動のエネルギーを、異常なレベルで正確にコントロールできなきゃ駄目。

 もしくは未来人ですら尻込みするほど成功の覚束ない技術。



◎そして最初から最後までタイムパラドックス


 ショートレンジ移動できるタイムマシンだと、即座にタイムパラドックス問題が。

 関係しないほどのロングレンジであっても、運用次第でショートレンジ移動が可能。

 つまり、結局はタイムパラドックスにつかまる。


 ……どのみちタイムパラドックスを解決しなきゃ、時間移動なんて無理!?



★大結論!★


 今現在に未来人が来ていないということは、むこう100年はタイムマシンが発明されない証拠なだけ!

 もしくは世代交代型時間航海を成功させたキチガイがいなかった!


 ……タイムパラドックス? 知らんな!

 ホント、これがある限り時間軸や時間移動とか信じられません!(苦笑)



◎蛇足

 「教祖様のご尊顔を拝見!」なんて理由の世代交代型時間航海は成立しそうで怖い。


 そして基準値が10万年ぐらいだった場合、成功は絶望的にも感じます。

(これは創作的に使いやすい設定。基本的に成功確率が低過ぎて使えないし、もし成功したとしても繰り返すのは躊躇われる)


 さらにある程度の宇宙工学――少なくとも太陽系外へ有人探査開始ぐらいにならないと、基礎理論の研究すら不可能と思われます。

 なぜなら、偶発的に発生しても――

「意味不明な現象と共に、対象がどっか消えた」

 となるから!

 それが時間軸移動だったと判るには、先に述べた前提が必要と思われます。

 無くなったものが再発見されて、初めて空間移動していたと認識される訳ですし。

 つまり、技術ツリーの位置は、かなりの先端!?



◎それでも自由自在に時間航行する人物像を


1 実質的な不老不死

 知能の電子化もしくはAIなど方法論は問わないが、少なくとも一万年ぐらいはエゴを維持できること。

 これに準ずる種族でも良いけど、少し不安は残る。


2 最低でも光速の10%くらいを出せる

 最有力は重力コントロールでしょうか?


3 核融合と核分裂を完全にコントロールできる

 100年単位の亜光速航海となるので、無限エネルギーに近い技術が必要


4 亜光速で動き回っても問題ないバリア的技術


5 当然だけど時間軸を移動する方法

 人類は時間軸の認識すらまだですぜ(苦笑)


6 元素転換ができる

 何か燃料や消耗材がいるのであれば、採取では追い付かない&失敗の危険。

 欲しい物をエネルギーから作る方が確実。


 ……ようするに神?

 一昔前のSFにでてくる宇宙制覇種族だよ、これww

 ここまでハッテンしちゃったら、過去へ干渉とかしないでしょww

 未来人が来ないのは、人類はこれに到達しないからだww したくもないけどww



★裏FA!★

 好きな時空間へ移動可能となると、いま現在の地球人に興味がなくなる。

 だから未来人の来訪がない。

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