一緒に行こう。

人生のネタばらしをひとつすると、奇跡は起きる。こちらのタイミングなど読まない。唐突に起こる。ふと手にした本に心から求めていた言葉を見つけたり、全てから楽になろうとしていたその時に、何気ない誘いの電話が鳴ったりする。
今このレビューを読んでいるあなたが、もしも、壊れそうな心を抱えながら毎日を過ごしていたとして。この物語を読んで、単調な往復を降りてしまえたら、手を引いてくれる誰かがいたら、こんなに素敵なひとときを過ごせたら……と、思いを馳せることができたとしたら。
あなたも作中の少女たちのように、ゆめみる貨物になれたということだ。
この『ゆめみる貨物列車』という小説との出会いは、僕にとってもまた、非日常という、忘れ難い奇跡だった。
いつかこの先、絶望の底に沈んでしまった時、この物語が胸の中で煌めくだろうと僕は思う。