第3話 サヨナラの歌
恐い、ヘラヘラするのを止めたらどうなるのかが。
『私がいる』
そう言われて俺は頷いた。
まず俺は職員室にむかった。そして、おれを叱った先生に課題を手渡しした。
「おっ、やってきたのか。関心関心」
「お、おれ。この前の……」
この前のことを言いたい。
メルはなにも言わず俺を見つめてきた。
「あれは俺がやった課題でした」
精一杯だった。
教室ではいつものように須藤が俺に課題を見せてと言ってきた。
この前お前が俺にしたことを覚えてないのか?
「もう先生に出した」
声が震える。
「返してもらってこいよ、課題どうするんだよ」
「そんなの知らない」
須藤は怒っていたが殴られるようなことは流石になかった。教室で他の人も見てたからだろうけど。
まだドキドキする。
そして、俺はグループからハブられた。俺の絶対だった
一人は不安だった。でも俺の傍にはメルがいた。
グループを抜けて最初は不安だった。でもそれ以上に変に弄られない、理不尽なことがない今が楽だった。
あれほど嫌だった帰り道が苦痛じゃなくなった。
放課後暇になった俺はメルといろんなとこにいった。
メルは俺以外には見えないから電車代とか二人分かからないのもよかった。
東京タワーにスカイツリー、品川水族館にヴィーナスフォートとにかくいろんなところにいった。
メルが話しかけてきてももう嫌な気持ちにはならなかった。
その四、メルはお腹は空かないが食べれないわけではない。
その五、メルは結構頑固だ。
その六、メルは歌があんなに上手いのにあれいらいお願いしてもちっとも歌ってくれない。
「なぁ、斎藤って、この前パンケーキの店にいただろ」
見られてた。
「うん。甘いのわりと好きなんだよ」
もう、嘘で取り繕うのは嫌だったから認めた。
でもひとつだけ嘘がある、甘いのは好きだがメルに食べてもらいたくて行ったんだ。
メルは他のやつには見えないから俺一人でパンケーキ食べてるように見えたかもだけど。
「俺甘いの好きなんだけど一人では入れなくて姉の分も出すからって一緒に行ってもらってたんだよ。お前とだったら割り勘でいけるだろ、次は俺も誘って、俺も行きたいとき誘うし」
俺は初めてうそをつかなくてもいい友達ができた。
「そんでさ、今度は原宿までクレープ今さら食べに行くんだ」
『そう』
メルの返事はそっけない。
「なんだよ、もっと聞けよ話を」
メルがフラッといなくなることが増えた。
でも俺は寂しくなかった。新しいグループに入ったから。
『ついてきて』
放課後突然メルが俺の手を握り走り出した。
どこに行くんだと思ったらあの俺が大泣きした公園だった。
『この前の歌、最後まで出来たの、聞いてくれる?』
メルが突然そういった。
何度言ってもあの日以来歌ってくれなかったメル。
彼女の口から歌が溢れた。
二回目にきく彼女の歌はやっぱり上手くて引き込まれた。
途中で気がつく歌っている彼女が前と違い光だしたことに。
「おい、なんだよ」
メルは少し微笑んで歌い続ける。彼女はこうなることがまるでわかっていたようだ。
『私が此処にいる理由がなくなれば』というメルの言葉を思い出す。
今メルの歌っている歌はうそをついてピエロのように笑ってた俺の歌だ。
嘘をついて居場所を確保していた
俺はもう嘘をつかなくてもよくなって、メル以外の誰かの傍に新しい居場所ができて。
「いなくなったら、嫌だ。まだ原宿のクレープだって食べてない。プリンだってもっといろいろ種類があるし、雪だって見てないし、飛行機にも乗ってない」
歌うのを止めようとメルの肩を掴もうとした。
俺の手はメルの肩をすり抜ける。
どうして。
メルは俺がもうメルにさわれないことを知っていたかのように困った顔をした。
いつもそんなに表情豊かじゃなかっただろ、なんで今そんな顔するんだよ。
君が隣にいるのがいつの間にか当たり前になってた。
君に見せてあげたいもの、食べてもらいたいものがまだ、沢山あるのに。
まだ伝えないといけない大事なことも言えてない。
「俺は……」
あれだけ呼んだ名前を呼ぼうとするのに、名前が出てこない。
「どうして、名前が思い出せない」
『私のことを……』
君が光の粒になる。
もう、歌がおわるのがわかる。
「君が好きだ」
『覚えていてね』
そう歌い終えたとたん、光の粒が弾けとび消えた。
あれ、どうして俺こんなところに一人でいるんだ?
しかも泣いてるしなんで?
なんか覚えていなきゃということと。
「私のことを、覚えていてねー」
思わず口ずさんだ、なんて曲だろう。めっちゃいいメロディなのに曲名でてこないや。
うそつきピエロ 四宮あか @xoxo817
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