第8話 訪問者
「はるかー!学校の子来てるよ!降りてきなさい!」
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
母親の呼ぶ声で目が覚めた。
モゾモゾと布団から這い出て階段を降りる。
気分は土からでてきたゾンビ。今日は誰を襲ってやろうか。
……何を考えているんだ。頭が狂っているんじゃないのか。もう昼だ。目を覚ませ。
セルフ漫才。ノリツッコミ。脳内で完結させて母親のいるリビングへ向かう。
「誰?うちのクラス?」
「いや、雛野さん?だよ」
「ん、わかった。」
よりによって先輩とは……。
なんでサボっているんだと問いただしに来たんだろう。
いい機会だ。弁明のついでに退部させてもらおう。
「待たせてすみません。弁明くらいはさせてください。」
「あ、出てきた。ゆっくり話させてよ。いれて?」
「まぁいいですよ。入ってください。」
「おじゃましま~す」
とりあえず母親には出ていてもらってリビングでゆっくり話そう。
話す?何から?
彼女に裏切られてぜんぶ嫌になって学校行ってません?
なにそれ。いじめじゃん。
「あ、この後うちにお客さん来るから話するならあんたの部屋でして。この子の部屋でも大丈夫?」
「大丈夫です。」
「ってことでお部屋失礼していい?」
「いいですけど。ついてきてください。」
「汚いですけど、その辺に座ってください。ゆっくり弁明させて欲しいんで。」
「弁明とかしなくていいよ。なんとなく知ってるから。」
「え?それってどういう……。」
「この間香菜ちゃんに聞いたよ。どうして遥くん来ないのか知ってるか?って聞いた時に……ね。」
「そう……だったんですね。」
「ってこれは何?先立つ不幸を、って自殺するつもりだったの!?」
「別にどうでもいいじゃないですか。先輩には関係ないでしょ。」
そう言い返してハッとする。なんのために先輩がここまで来たのか。なんでわざわざ電話じゃなくて家まで足を運んでくれたのか。
なんで心配してくれている先輩の思いを踏みにじろうとしてるのか。と。
ただ言葉というのは出たらもう取り消すことが出来ない。文明がいくら進歩しようと無理な話だ。
謝ろうと先輩の方に向き直すと先輩は涙目になっていた。
「やだ!!はるか死んじゃやだ!」
「先輩?え?は?どうしたんですか?ごめんなさい!」
「はるかのことが……!!」
ここまで先輩が取り乱すとは思わなかった。
普段明るくてフレンドリーで理性的な人がここまで感情的になるなんて思ってなかった。
「ごめん。帰るね。学校で待ってるから。」
「はい……。」
恋と悪魔 小鳥遊 夏樹 @AKANEtsukineko
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