セーラー服とラブレター【文フリ東京サンプル】

六花 ちづる

セーラー服とラブレター

『拝啓、最愛のきみへ。


きみがこの手紙を読んでいるということは、わたしはもうこの世にいないのだと思います。

 きみのことだからきっと、この手紙を読んでも動揺するどころか、表情ひとつ変えないのでしょうね。わたしはそんなきみがだいすきでした。きっと死んでからもずっとだいすきです。


 まだ若いのに、とか、かわいそうに、とか、そういうことを言う人もいるのかもしれない。そんなことないのにね。わたしがこうなるのはきっともう生まれたときから決まっていて、避けられない運命だったんだと思います。わたし自身、避けるどころか、それを望んでいたということは、きみが一番よく知っているはずです。


 きみはいつも、早く死にたいというわたしの言葉を馬鹿にせずに黙って聞いてくれていました。はじめは聞き流しているだけだろうとか、どうせ興味がないんだろうとか、そんなふうに感じて、腹立たしく思ったりもしたけれど、決してそんなことはなかった。きみは、わたしの一番の、唯一の、理解者でした。


 少し、思い出話でもしようと思います。きみの嫌いな思い出話を、ありったけの感謝を込めて。


 きみとわたしが出会ったのは、高校三年の秋のことでした。


……後略……

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セーラー服とラブレター【文フリ東京サンプル】 六花 ちづる @chidururikka

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