第8話 真相

「でも、あんたも当然知っていたんだよな。これが狂言窃盗だったってことは」

 ジョバンニは首をガクガクと縦に振る。


「この宝石を盗むように依頼したのは、サミュエル・マイヤー。本物の青い涙は奴の手元にあるんだろ? 目的は保険金だ。大方、信託財産をつまんだか何かして大穴空けたってとこだろうな。相続人がもうすぐ20歳になるんで、慌ててこんな芝居を打ったってわけだ」

 ジョバンニの目が大きく見開かれ、元々骸骨じみた顔が増々骸骨のようになる。


「しかし、分からねえのは、わざわざ、こんなイミテーションを盗ませたことだ。どうせ、奴の手元に戻るんだからこんな小細工をしなくても良さそうなのに」

「俺もそう言ったんだが、あんたがそいつをそのまま持ち逃げするのをサミュエルの野郎が恐れたのさ。1億ドルはする宝石だ。欲に駆られる心配があると……」

 やっと落ち着きを取り戻したのだろう。ジョバンニが口をきいた。


「なるほどね。俺が信用できないと」

「いや、まて。それはあの野郎が言ってことだ。俺じゃねえよ。俺はあんたは信用できるって言ったんだ」

 俺はフンと鼻を鳴らす。


「いや。本当だ。しかし、バカな野郎だぜ。あ、イヤ、サミュエルの奴のことさ。ニセの宝石なんぞ掴ませなきゃ。この話はうまくいったんだ。そうだろ?」

「そうだな。単純な事件に終わっただろうな」

「それじゃ、後は任せてくれ。きちんと奴に落とし前はつけさせる。24時間以内に色を付けて所定の口座に振り込まさせてもらう」


 ジョバンニに別れを告げて、ホテルに戻った。もう、朝日が昇ろうという時間だ。マットから電話がある。30万ドルの振り込みがあったとのことだった。部屋に入り、メリッサの隣に潜り込む。


 昼過ぎに起きて食事を取ってから、郵便局へ行き小包を送る。受取人はニューヨーク市警察N.Y.P.D。中身は素敵なイミテーションのダイヤとサミュエルの横領の告発状だ。


 じゃあな、サミュエル。しばらくはアンクルサムが衣食住の面倒をみてくれるだろうぜ。

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青い涙を盗め! 新巻へもん @shakesama

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