第5話


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…夢を見なかった。

104号室の男性と会えなかったあと、

俺は深夜の新聞配達の仕事を終えてボロアパートに帰ってきて、

さすがに眠くて寝てしまったのだが、予知夢は見なかった。

 

予知夢を見るようになってから夢を見なかったのは今回が初めてだった。

予知夢そのものを見なかった事も気になったのだが、

もっと気になったのは104号室の男性が

予知夢の通りに死んでしまったのではないかという事、

俺は104号室の男性の安否が気になり、104号室に行き、ドアをノックしてみた。

しかし、返事は無い。 

 

104号室の男性に会えない以上、俺はもうどうすることもできなかった。

104号室の男性の勤務先も連絡先も知らないし、

何も起こってないのに不動産屋に電話する訳にもいかない。


 

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数日後、104号室に不動産屋のスーツを着た人が来た。

俺はすぐに、その不動産屋のスーツを着た人に話を聞いてみた。

そしたらやはり、104号室の男性は高速道路で事故死したらしい。

引っ越し業者のような人たちが104号室から荷物を運び出していた。

その日は104号室の男性の会社の関係者らしき人も来ていた。

俺は呆然とその状況を見続けていた。

そしたら男性に声をかけられた。その男性は104号室の会社の同僚の人だった。


 

男性『あなたはこのアパート住んでる人ですか?』

 

俺『あ、はい、101号室に住んでるものです』

 

男性『…私はね、104号室の住人の会社の同僚なんですけど』

 

俺『ああ…はい、先ほど事故で亡くなられたと…』

 

男性『…いやー、急な事故だったんでびっくりしたんだけどねー』

 

俺『……』

 

男性『事故の日の朝、彼と会話したでしょ?』

 

俺『え!?あ、はい。』

 

男性『事故の直前に彼が言ってたんだよ、101号室の男が話しかけてきたって、

   君の事を気味悪がってたよ。亡くなった彼に何か用があったの?』

 

俺『いえ、ちょっと…話したことが無かったので…』

 

男性『亡くなった彼に聞いたんだけど、このアパートの他の住人も立て続けに

   亡くなってるんだよね?何か怖いね、呪われてるんじゃない?このアパート』

 

俺『……』

 

男性『ああ、不謹慎だったね、ともかく不幸な事故だったねぇ…』

 

俺『……』

 

 

その後、104号室の撤去作業は終わり、ボロアパートの住人は俺だけになった。

そうなのだ。俺が住むこのボロアパートは1階建てで部屋は4部屋のみ。

俺の部屋の以外の住人が皆、死んでしまったために、

住人は俺のみとなってしまった。

 

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俺は変わらずにボロアパートでの生活を続けていた。

あれから予知夢は見なくなった。夢を見なくなったのも気になるのだが、

それよりもめんどくさいのが、俺の部屋を訪ねてくる人間が数人いた事だ。

どうやら住人が立て続けに死んだ

このボロアパートの噂を嗅ぎつけた記者みたいなのが俺の部屋にやってきて、

俺に死んだ住人の話を聞いてくるようになった。

ご丁寧に名刺を渡してきた記者なんかもいた。

 

俺は訪ねてくる記者に亡くなった住人の話を聞かれたが、

予知夢の話はしなかった。

そういう予知夢の話を面白がりそうな連中だったし、

俺自身が変な人間に思われるのも嫌だったので、予知夢の話は黙っていた。

記者の質問には、ただただ同じように

『住人はこういう死に方で亡くなった』とか

『付き合いは無かった』などと答え続けた。

 

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不動産の管理会社から俺に連絡があった。

ボロアパートの取り壊しとアパートからの俺の立ち退きが決まったのだ。

その話は大家さんと不動産屋の間で、かなり早く決まった話らしい。

そりゃそうだろう、事故物件ならぬ『事故アパート』として

少し有名になってしまったから、大家さんも管理が嫌になったのだろう。

俺も不吉なアパートに住み続けるのは嫌だったし、

立ち退きで引っ越しの資金が出るのは俺にとってはありがたい話だった。


 

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それから半年後、俺はボロアパートから立ち退き、

新しい安い家賃のアパートに引っ越した。

ボロアパートがあった場所から数百メートル離れた、

見た目はボロアパートよりかは良いが、

まぁ、同じようなアパートに移り住んだ。

引っ越し作業も終わり、俺は疲れて眠りについた。




 

= 建築現場の足場に潰されて事故死 =




 

…俺はまた夢を見た。

 

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夢死(ゆめし) 峰ひろ @cyupanon

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