第4話


= 高速道路で正面衝突して即死 =


 

もう1ヶ月以上この夢を見ている。

この毎回見る夢が「他人の死に方の夢」というのは確実なのだ。

そして死ぬ人間は、おそらく俺の住んでるボロアパートの104号室の男性、

という推測をしてから1週間が過ぎてしまった。

 

俺は「近いうちに自分の近くにいる人間が死ぬ」という事を確実に知っている。

その事実が始めはもちろん怖かったが、

同時に「特殊能力を手に入れた」と考えてしまう自分もいた。

自分が他の人間には無い能力を手に入れることができて少しだけ興奮していた。

 

しかし、特殊能力という言い方をしても自分に役立つ能力なわけでもない。

『他人が死ぬのがわかる能力』

そう考えたら自然と104号室の男性は死んでしまうのか?

死ぬのを防ぐ方法は無いのか?予知夢の未来を変えることができないのか?

と、毎日のように考えるようになっていた。

 

何とか104号室の男性に俺の予知夢の話を伝えたい。

しかしいきなり俺が104号室に行き、

その予知夢の話をすれば間違いなく変質者扱いされるだろう。

予知夢の内容を書いた手紙を書いて104号室のドアに挟んでみようとも思ったが、

まぁイタズラだと思われて無視されるか警戒されるようになるかのどちらかだろう。

 

= 高速道路で正面衝突して即死 =

 

…まだ予知夢は変わってない。この予知夢の内容が変わったら人間が1人死ぬ。

この高速道路の事故死の夢が続いている限り、その予知夢の人間はまだ生きている。もしかしたら今日にも104号室の男性は死んでしまうかもしれない。

 

俺は意を決して、104号室の男性の部屋を訪ねてみることにした。

104号室の前まで行くと俺はものすごい緊張していた。

何と言って104号室の部屋をノックすればいいのか?

104号室の男性に『何の用ですか?』と言われて俺は『あなた死にますよ!』

とでも言うのか?何か自然な会話に持ち込める方法は無いか?

そんなことを考えながら104号室の部屋の前に立ってから30分が過ぎた。


そしたらいきなり、104号室の扉が開いて中から男性が出てきた。



 

俺『あ!ど、どうも、すいません!部屋の前で…』


104号室の男性『はぁ、な、何してるんですか?』

 

俺『あのぅ、ちょっとお尋ねしようかと思ったら扉が開いてびっくりしちゃって…』

 

104号室の男性『あーそうなんですか、え、ご用件は何ですか?』

 

俺『あ、えーと、お仕事は何をされてるんですか?』

 

104号室の男性『え?あー、配送業をしてます。派遣で、』

 

俺『そうなんですか!白いワゴンとか乗ってますか?』

 

104号室の男性『あ、はい。仕事で白のワゴンに乗ってますけど…』

 

俺『高速道路とかに乗りますか!?』

 

104号室の男性『あ、はい、えーと、配送先が遠かったら乗りますね』

 

俺『そうですか!あ、えーと…あの、その…』

 

104号室の男性『…すいません、仕事に遅れそうなので、もういいですか?』

 

俺『あ!はい!急にすいませんでした』

 

104号室の男性『101号室の方ですよね?』

 

俺『あ、そうです!すいません急に、また時間あるときに来ます、失礼します!』

 

104号室の男性『はぁ…それでは。』

 

 

という会話をした後、

104号室の男性は俺を不審がりながら歩いて道路の方へと行ってしまった。

間違いなく変な奴だと思われたと思う。

めちゃくちゃ焦ったが104号室の男性の情報が得られた!

間違いない!俺が見てる予知夢で死ぬのは104号室の男性なのだ!

どうにかして、その予知夢の事を104号室の男性に伝えないと!

 

その後、俺は昼の新聞配達の仕事を終えると、

すぐ自分が住んでるボロアパートに戻り

104号室の男性が帰ってくるのを外で待ち続けた。

予知夢の話を104号室の男性に不審がられずに伝えられるように

頭の中で何度もシミュレーションしてみた。

変な奴だと思われてもいいから、とにかく予知夢の話を伝えたかった。


 

しかし、深夜まで待っても104号室の男性は帰ってこなかった。

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