Requiescat in pase
「んぅ…………」
「起きなさい結夢、そろそろあなた学校行く時間でしょう?」
母親の夢乃に揺すられ、結夢は目を覚ます。
「メリー……」
彼女の名前をハッキリ覚えている。
でもあの騒動は夢だったのだ。本当に彼女はいるのだろうか?
「……あら、その窓の。可愛いわね」
窓の?
結夢は窓の縁を見てみる。
そこには夢でも出てきたミニツリーが、ちょこんと置かれていた。
「……友達との思い出」
呟いて、結夢は少し心が温かくなった様な気がした。
「朝ご飯は出来ているわよ。私は仕事だから、好きに食べて頂戴ね」
「ありがとう。仕事頑張ってね」
「クリスマス時期に忙しくなるのは、私の仕事の面倒な所よね……。
晩にはチキンを買ってくるわ。今日はクリスマスイブだものね」
そうだ。今日は12月24日。
カレンダーを見てはっとする。
私はいつから夢を見ていたんだろう、と。
夢はイブから始まっていた。
だけど起きてみれば今日がイブだ。
不思議なモヤモヤに包まれたまま、朝ご飯をいつも通り食べ、いつも通り制服を着て、いつも通り高校に向かって……。
せっかくだから探偵さんに『メリークリスマス』とあいさつでもしに行こうか、という気分になって脇道に入ろうとしたその時だった。
「あれ……衣繍結夢じゃね?アンタ何でここにいるの?」
「それはこっちのセリ……はっ!」
夢と同じやり取りをしていた事に気付いて、辺りを見回す。
何処かでこっそり、メリーが見ているのではなかろうか、と結夢は思ったのだ。
「いきなり驚いて変なの。寄り道はダメでしょ、高校生」
「あなたも高校生でしょ湊」
結局その時、結夢は探偵事務所に行かず普通に高校へ向かった。
もしあの時、探偵事務所へ寄っていたら……醒めない夢に堕ちていたかも知れない。
(了)
◇
後書きのような何か
『探偵は化猫さん』の番外編でした。
コメディを書き慣れていないせいか、かなり苦戦しました。そして相変わらず突貫工事感の否めない構造……。
まだまだ執筆不足ですね。自己反省点です。
今回は割増、ネタも入れてみました。
気付いた読者さんは鋭い。
一つだけここで言ってしまうなら、タイトルの頭文字を取ると【Tapir】、バクになるという事ですかね。
という訳で本当におしまいです。
ではでは。
クリスマス企画イベント小説 笹師匠 @snkudn
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