この夜の下、君色を探して

夏瀬來音

プロローグ

月が綺麗な日だった。

暗闇の中で淡い光が点滅していた。

君の頭で静止している、黄金色の蛍が、君の長い前髪を照らした。

光を帯びた前髪は、夜の風に吹かれて、君の匂いを放っていた。

苦しいことも、此処にいる意味も、いつの間にか忘れていた。

この明るい夜が終わってしまうのが寂しくて、僕はそっと、君の背中に手をまわした。

たった一夜のことだ。

一瞬だけ、夢なんじゃないかと思った。

でも、暖かく包まれていた僕の背中が、そんな疑問さえも消していった。


それは、淡く光る、懐かしい出来事だった。



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この夜の下、君色を探して 夏瀬來音 @milkysnow0619

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