これもきっと君の色

 もし彼女の写真を撮るとしたら彼女にこんなおもちゃみたいなカメラを見せなくてはいけないそう考えると恥ずかしくなりやめてしまおうかと思った。しかし、彼女の気持ちが知りたいその気持ちと比べてしまえばそんな恥ずかしさなんてちっぽけなものだった。そうして僕は学校帰り彼女にこう言った。

「実は僕フィルムカメラ持ってるんだ。モデルになってくれないかな」

 すると彼女は

「モデル!?私でよければ協力するよ!」

 そう言ってくれた。それから週に1回金曜日の放課後に2人で残って彼女の写真を撮る練習が始まった。そうして自然に彼女の写真を撮り気持ちを知れるようになった僕は心の中では「悪いことをしている…」そう思いながらも彼女の気持ちが知りたくて何度も写真を撮った。

 テストがあった日の写真は自信満々なオレンジ色、それテストが返ってきた日は残念そうな葵色。友達と喧嘩していた時は攻撃的な真っ赤な赤色、その友達と仲直りした日は幸せそうなピンク色。撮る度撮る度変わる君の気持ちの色が僕は大好きだった。なかでも僕が一番好きだった色は外を眺めている時の写真に写った薄い赤、あれは「乙女色」だ。その色の気持ちの時の彼女の写真が1番綺麗でその時の彼女が一番好きだった。そんなことを繰り返していくうちに当然僕は彼女のことも彼女の気持ちの色もとても、好きになった。友達思いなところ、何事にも本気なところ、頑張り屋さんなところ、全部が、もっと僕に彼女を好きにした。そんな幸せな日が続いていたある日教室で彼女の写真を撮っているとまた、窓の外を眺め以前写真屋さんでみた写真の女性と同じ表情をしていた。その目線の先には下で部活をする男子。その人を彼女は見ていた胸には「乙女色」を住まわせて。その時はまだ僕には分かっていなかった。でも、あの時。

 僕は夜、窓の外に広がる星空を撮ろうとカメラを構え星の写真を撮った「彼女にこの写真をみせたいな…」そう、思って何度もシャッターを切った。

 星空の写真が現像され、帰ってきた時僕はやっと気がついた。窓の内側から撮った写真に写った僕の胸にかかった「乙女色」の靄と、彼女が窓の外をそんな色を住まわせて眺めていた理由に。

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