第7話 入院前に

 ウエスト症候群が確定した。

 となると、次は治療だ。

 ウエスト症候群という病気はなかなかに厄介で、「難治性てんかん」という分類をされる。難治性。つまり、治りにくい、ということ。

 ましてやこのウエスト症候群という病気、精神運動発達地帯が約9割で起きるという「予後不良」とされる病気だ。治りにくいし予後不良。まぁ、生命に直接何かあるわけではない、ということだけは救いだったけれども。

 そんなわけで基本的に治療は入院をして、になる。

 その場で入院の調整。病床の確保などもあるので、一日あけて水曜日からの入院となった。デパケン、というてんかんの一般的な粉薬を処方された。とりあえず入院まではこれを飲む。これが効くことはそうないらしいのだけれど、それでも効いてくれることを祈った。

 先生たちとの診察はそこでいったん終わり。そのあと部屋を変えて、医療ソーシャルワーカーさんとのお話になった。

 この国はなんやかんや、制度がある。ありがたい。

 小児慢性特定疾患、というものにあたるので、それの申請の仕方や入院の書類、その他もろもろを説明を受け……たと思うのだけれど、確定された、という情報ですでに頭いっぱいのところに詰め込まれても正直飲み込めていなかったと思う。次から次へと出される書類にひたすら名前と住所とを書いた記憶しかない。

 そして、上の子の問題。

 上の子当時三歳前。わたしが下の子の育休中だったので、通っていた保育園も時短だったのだが、それではなかなかに厳しい。なにせ小さい子の入院、ほぼほぼ親の付き添いが必須だから。これ本当は、制度上はダメ、らしい。小さい子も付き添いは原則不要に……みたいな、ことになっている、らしい。が、そうはいっても別に看護師さんが突如増えたり保育士さんが突如生えたりするわけもなく、他の大人と同じ人数で子供なんぞ見れるわけもなく、自然と子供の入院イコール親の付き添い必須、になる。制度上は本当はアレなので、出す書類は「付き添い許可申請書」という名目になっていて、「子供の精神状態が不安定だから付き添いさせてください」という文面になっていて、親が言うから仕方なく、みたいな体裁になっている。ちょっと闇。

 そんな書類を出す、ということはつまり母親であるわたしが下の子に二十四時間付き添いすることになって、誰が上の子見るのよ、ということだけど頼れる親戚がいない族なので、パパと保育園オンリーだ。

 時短でパパの仕事上がりまでとかはさすがに無理。

 と、いうわけで。助けて行政ー!

 という感じで、ソーシャルワーカーさんにいろいろ渡された大量の書類といったん家によってひっつかんだマイナンバー関係の書類やらを持ち、保育園に軽く事情説明しつつ、今日のお迎えが遅くなると連絡し、そのまま役所へゴーである。

 いまの役所ってめちゃめちゃ親切です。

 事情を把握した役所の担当さん、あちこちと連携とりつつまた書類出してきてくれたりなんだりして、本来なら月替わりのところからじゃないと適用できないらしい「時短保育」を「標準時間保育」にする変更届を何をどうしたのか「水曜日から入院だとのことだったので、水曜日からにしました!」とやってくれた。すごい。

 その他の手続きも出来る限りやってくださりひたすら感謝。

 そのままお迎えにに行くと、今度は園の先生が出迎えてくださり、事情を聞いた後にきっぱりと一言。

「こぐまくんは任せてください!」

 子育てって、どんなにあがいても家庭内だけでは完結しないもんです。

 ひたすらありがたさを感じたのでした。


 そして、火曜日。

 怒涛の勢いで入院の準備をしました。


 明日から入院。その夜、こぐまとお風呂に入りながら説明しました。

 二歳児。どこまで理解できるかは分からなかったけれど、ちびぐまが病気でしんどいこと、病院にお泊まりすること、ママはそれについていくから、おうちにいなくなること。

 こぐまはどこまで分かっているのやら分かりませんが、こう言ったのを覚えています。


「まま、がんばろーね!」


 さあ。入院です。



 ここらで。

 入院にあたりあってよかったものなど。



 子の着替え (かわいいのチョイスすると心がちょっと落ち着く)

 親の着替え (なるべく動きやすい服を)


 マグカップ スプーン 紅茶セット (お湯はあるので、いつでも何かを飲めるように!)

 親のお箸 (コンビニお箸を忘れられると詰むので持ってたほうがいいですw)

 子のスプーンなどの離乳食セット(ごはんはでるけど、離乳食用スプーンはなかったのであると便利でした。病院による)

 スポンジ&台所洗剤 (お箸やマグを洗います)

 カットして冷凍したキャベツ・白菜 (親のごはんがコンビニごはんオンリーになり野菜が取れない! 冷凍したこれらをお弁当と一緒にチンして、マヨやら塩やらで食べるだけでちょっとちがいます……)


 手帳 (意外と入院中急が叱ったり予定が詰まったりするので、必要)

 サコッシュ的バッグ (財布 スマホ あたりだけを持ち歩けるもの)


 スマホアプリで、ぴよログ (タイマーで発作の時間のカウント、その他に(発作)を作成して、発作時間を記録できました。なお、ウエストの親御さんたちが共同開発した、nanacara―ナナカラ― というアプリがあるようです(当時はなかった)。よかったらご検討ください)

 タブレット&本 (忙しいのに突然暇だったりするので。アマプラでハリーポッターシリーズ全部観た…w)


 100均で買ったカゴ (着替えを分けてここに突っ込んで棚にいれてました。袋からいちいち出すの大変)

 ゴミ袋&S字フック (入院においては何かと便利)

 エコバッグ数枚 (院内で洗濯するので持ち運びに便利。それ以外も何かと活躍。うちに着替えを持って帰ってもらうのにも便利です)


 ベビーガー (子の移動に。親が離れるときとかはこれに乗せてナースステーションでみてもらえました)


 こんな感じでしょうか。

 あとはちまちまと必要なものをその場その場で持ってきて貰ったり買ったりしてました。

 袋パンとか。お菓子とか。チョコとか。飲み物とか。


 入院直前にいわゆる「なんでうちの子が」モードに一瞬入りそうにもなったんですが、わりとすぐ抜けました。

 これあれか、なんでうちの子が案件か。と考えたあたりで、いや、他の子でも駄目だわ。つーかだれがなってもダメだわ。

 病気自体が駄目なんだわ。そうだわ。誰も何もねぇわ。んでもってもうこれ、運だわ。運が悪かったとしか言えねぇんだな。

 うん。

 ってスンッてなったからでした。

 

 そんなこんなで、入院です。

 

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点頭てんかん(ウエスト症候群)闘病記 なつの真波 @manami_n

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