第3話 シャチクイエローの場合
IT系。
しかも孫請け会社のPG(プログラマー)。
労働基準法?
何ソレ美味シイノ?
有給?ノー残業デー?ボーナス?
それは二次元のお話です。
今日も終電後まで働いて・・・請負元に請求出来るのでタクシーで帰宅しても経費精算出来るので仕事後にほんの一杯、ビールを飲むくらい許してほしい。
社畜だって餌なしでは餓死します。
えぇ社畜です。
絵に描いたような社畜です。
(私を社畜と呼ばずに誰を社畜と呼ぶの?)
「あー・・・ビールうめぇ・・・」
ガード下の赤ちょうちん系居酒屋で終電後に一人でビールをかっくらってる女がいても眉を顰めるでもなく見て見ぬ振りをしてくれるのが大都会の優しさかもしれない。
自分的にはポニーテールと言い張っている一つにまとめただけのひっつめ髪を肩から払い砂肝串を口に運ぶと12時間振りの固形物とじんわり口の中に広がる滋味に思わず「はー」っと感嘆符を口にしてしまう。
今の仕事は余りにもデスマーチ過ぎてもう自分で担当者は5人目だ。
勿論、引継ぎなんて都市伝説にはお目に掛かれなく運用も仕様もあやふやで理解できていないまま目の前のコードを書きバグを取って試運転して・・・気付けばいつも午前様、土日出る事も珍しくないという立派な社畜になっていた。
なんでプログラマーになんてなったのだろ?
タイムリープ出来るなら就職活動中の自分に「その業界はやめておけ」と言いたい。
でも手に職でもなく免許や特殊技能を学べるでもないふんわりした地方の私立大文理学部卒の女が都内で一人暮らし出来る給料をもらえるような「未経験、分野外でもOK」な職種はここしかなかった・・・。
もう一杯何か呑もうと壁に貼ってあるレトロな新聞を模したメニュー表に目をやると気になる一文が目に入った。
「社畜戦隊・シャチクイダー?変なの・・・
すみませーん、ハイボール一つお願いしまーす」
3行広告にそれだけ。
取り敢えず変な偽広告より今はアルコールが欲しい。
直ぐに運ばれてきたハイボールを一口呑んでもう一度さっきの文字を探そうと視線を戻したがそこには「シャチクイダー」の文字はなく、
「疲れた夜は赤丸ワイン」
とレトロなイラストとドリンクの広告があるだけだった。
え?何?私酔ってるの?
取り敢えず気を取り直して砂肝を咀嚼し鶏ももにかぶりつくと色々なことがどうでもよくなっていった。
社畜戦隊・シャチクイダー @trisbufferph7
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