姉弟は両親との生きた証を残すため、死ぬまで終わらない殺し合いの場へと身を投じる。
2人を放っておけない損な性分の立会人は、彼らに1人の男を紹介する。
師匠であり、共に戦う仲間となる1人の男を。
物語の展開から見て少年少女の成長と各章の最後に用意されている丁寧な描写によって盛り上げられる戦闘が見どころと考えるのが妥当と思えるが、私はこの物語の最も注目すべき点は群像劇の如く描かれている各登場人物の心理描写ではなかろうかと考える。
描写がかなり深めなので、若干テンポはゆったりめに感じるかもしれないが、豊かな描写力によって書かれる心理的葛藤は見事としか言いようがない。
メインとも言える少年少女の成長と丁寧な戦闘シーンも含め、見所満載の秀逸作品。
是非1度ご覧いただきたい。
生死を賭けた殺し合い。
しかし、状況は全ての登場人物が追い込まれる方向へ向かっていく。
単純な勧善懲悪など存在しない。
ただ、正義の皮を被った人間の悪意の恐ろしさが、常に横たわる。
しかしだからこそ、お互いの負けられない勝たなければいけない理由の果ての戦いは、目が離せなくなる。
負けて生き残った者も、とても「運良く」生き残ったとは言えないような逆境に追い込まれる。
勝った者も勝利の美酒に酔う暇もなく、更なる地獄に押し出される。
そんな彼等の境遇に同情しながら応援するも良し。
……そして彼等の苦しみに愉悦の笑みを浮かべるも……いや、これは聞かなかったことにしておいてもらいましょうか。
社会の闇に生きる彼等の人間模様。
戦いの苛烈さと共に覗いてみる価値は、大いに有りです。
この作品は中々深みのある小説です。
読み込むほど味がある、と言えばいいのでしょうか?
確かに冒頭から「小説内の独自用語」が出てきて、ちょっと取っ付き難い所もあるのですが、
ちゃんと読んでいくと、その世界観の完成度と設定の細かさに感心してしまいました。
現実世界の状況と、この小説の世界の設定が、無理なくうまく噛み合ってます。
そのため小説の世界が、すんなりと頭に入ってくるのです。
主人公の姉弟は、社会の罠とでも言うべきもので、
「百識」と呼ばれる異能力者同士の戦いの場に駆り出されます。
だが相手は主人公二人より経験も実力も格上の存在。
そんな中、二人はどうやって生き残っていくのか?
「設定や世界観がキッチリ練られた小説を読みたい」
そんな人にお薦めです。
――百識。
膨大な魔術的、呪術的、知識群を指す。
その源は、術者の血に秘められていると言う《方》と《導》。
異能を持つ姉弟は、命をかけたコロッセオでの初戦で勝ち残り、その代償として格上の制裁マッチを行うことになる。
異能や超能力を用いたバトルは迫力満点。
臨場感があり、その情景描写に思わず目を背けたくなる場面も……。
現代の少年法との問題点も重ね合わせ、考えさせられる場面もあります。
――果たして姉弟の運命は……。
逃げ場のない、DEAD END!
命をかけたこのデスゲームから、あなたは目を逸らすことができないだろう。
(第4章 「斬ると決めた日」第3話 「SonicBrave」拝読後のレビュー)
百識の存在。
《方》と《導》の不思議な力。
激しい戦いと、
力を学ぼうとする、姉と弟。
二人の戦う理由と、学んでゆく姿が、
現実的であることに、驚きを覚えました。
ファンタジックで、摩訶不思議な力を持つ者の、
戦いや暮らしぶりは、
空想的で、現実とは離れがちなものだと思います。
命とお金をやり取りする、
戦いの場は、過酷なものですが。
二人が戦う現状を選択した理由が、
両親の残した暮らしを守ること、
とても間近な問題でした。
自分たちで、どう生きてゆくか。
良きアドバイザーを迎え、
《方》の力を学ぶ様子は、
まさに地道な努力です。
出来るようになるのは、
そんな努力があるからでしょう。
少しずつ成果が見える様子に、
嬉しくなります。
矢矯の決断など、ファンタジックな中に、
垣間見える、現実的な選択に。
人物の問題を、間近に、
考えさせられます。