冬、雨、朝

@akiko_ooo

第1話




 冬の、雨の降ったあとの朝が好きだ。相変わらず冷たいけれど、どこかやさしさを含んでいる空気。こういう朝は散歩したいと思うのだけど、わたしはひとりでそれをするのが嫌いで、だから結局外を眺めながら珈琲をすするだけ。

 コンコンコン、と3回ノックが玄関でされる。朝から機械音を聞くのが嫌いなわたしのためにインターホンの代わりに鳴る音。多めに淹れた珈琲を別のマグカップに注いで、それから玄関を開ける。

「いま、歩きたいでしょう?」

 あいさつよりも先に口にされるその言葉に、どうしようもない愛おしさを覚えて。まだ湯気が立っているカップを渡し、わたしはポケットのない上着を取りにいく。


(あなたは超能力者なの…?)





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