何を拾ってきたの？

何を拾ってきたの？

　我が家には柴犬がいる。最近やって来て軒先の物置を自分の住みかにしたようだ。若い頃からの夢だった田舎での気ままな独り暮らしを満喫していた私は、その小さな客を別段どうとすることはなく放っておいた。あちらも私に対して、我関せずと言う態度を取っていた。

　だがたった今、私はその柴犬を近くで見ることとなった。くりくりとしたつぶらな瞳が、まるで悪戯っ子の様に私を見つめている。その口に咥えているのは土に汚れた一本の細長い骨だった。それを自慢げに見せ付けるようにして、私に近づいてきたのだ。

　そこで私ははた、と気が付いた。この柴犬はもしや彼女の飼い犬ではなかったかと。

　遠くの山から聞こえてきたパトカーのサイレンを耳にしながら、私はある日のことを思い出していた。