愛のない、ファミレスー日曜昼過ぎから17時までの虚構ー

浅田 宗一郎

第1話 たばこ煙のない喫煙席




日曜の昼下がり。


誰にも邪魔をされずに執筆する場所を求めて、ファミレスへ。



ほぼ、満席の中、喫煙席を見る私の視線を察知し、定員が、本日、全席禁煙席になっています。と。


そっか、、、。店でようかな。


クーポンを眺めながら、ドリンクバーと白ワインのグラスを。合計で288円だ。

お車は大丈夫ですかと、質問された。

はい。



このパソコンを取り出す私を創られたエガオで眺める、溢れかえる主婦の陰口やだじゃれ。

意外にもお姉さま方もおやじギャグを口走っている。



口数の少ないカップル。

食事とパソコンを交互に手に取るサラリーマン。


横目で別テーブルの主婦を観察する主婦。口だけが正面を向いている。


強く心に決めた、日曜日昼過ぎにファミレスには行かない。



私もいずれ、こんなママ友なんていうコミュニティーに自ら志願し、仲間に入れてもらうのか。

そのために、お菓子を持合せたり、一生懸命話を合わせたり、とんだご機嫌とりだ。一目でわかる。

夫は、主婦は気楽でいいという。球場が違うだけで、同じことを組織(コミュニティー)の監督(ふうちょう)から求められている。



年齢が上がるにつれ、酒と脂っこい物を頼んでいる。人生を謳歌するように。

人の不幸は蜜の味がごとく、酒のつまみにもなっている。


日頃の家事のうっぷん晴らしだろうか。



この小さなコミュニティーで余生を過ごし、生きがいを見つけるのは至難の業のように思える。


あと何十年さきになるのか。

友達ってなんだ。


なぜそんなにも、憎しみがうまれのか、主婦の心のうちを明かしたい。

きっと、今の私は理屈で片づけてしまう。


今、私がここにいるように、他の場所を求めてやっとたどり着いたのが、ファミレスであっただけだ。



無償の愛って。なんですか?


愛があれば、憎しみはうまれないのか。



いや、憎しみがあるから、愛が生まれた。

自分の醜い憎しみから逃れるために、愛にすがった。

ことばで表せられない得体のしらない何かを放すことができず、つらいのかもよく分からない。


だから、愛にすがった。



愛は年齢に関係ないだろう、でも、今日のファミレスに愛が見つけられない。

日本だからなのか。こんなに主婦の塊が日曜の3じにいる光景は、

心地がわるくてしかたない。


まいごなのか。


助け合っているのか。


でも、愛はみえない。


現実と妄想はそんなにかけ離れているのか。



一体、自分は何者なのか。答えはいらない。つまらなくなるから。

こたえのある人生では。でも、ヒントはください。



もう少し、あたたかい愛があればいいな。


もう少しだけ、人を愛する事を思い出してほしい。



夕方17時。

形のない愛にすがった私だけが、テーブルにいる。

せわしく働いていたスタッフも足音をたててない。


虚構の愛に皆、帰っていったのかな、


取残されているのは私だけかな。



無意識にコップを3つ使っていた、いつもは1つを使いまわすのに。




愛と現実と妄想と日曜のファミレス


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