図書館暮らし。

大福がちゃ丸。

図書館暮らしの

 平日だからだろうか、この図書館にはめずらしく、私一人しか利用者が居ない。

 窓際の席に座り、本を広げる。

 秋の木漏れ日が窓からあふれ、ぽかぽかと温かい。


 本を読み進めていたが、温かい陽気にウトウトとしてきた。

 いつの間にか、机に顔を伏せ眠り込んでしまったようだ。

「くすくすくす」

 小さな可愛らしい笑い声がする。


 眠い目で、笑い声の方を見てみると、何か薄っすらと光る小さいものが飛んでいる。

 え? 何? 小さい人型の虫の羽の生えた……妖精?!

 その小さな妖精たちは、本を本棚に抜き差し愉快そうに笑い声をあげている。


 いや、これ夢だよね? 薄目を開け、妖精たちを見ていると、今度はどこからか小人のようなものが現れて、その妖精たちを追い払い始めた。

 妖精たちは、キャッキャッと笑い声を上げながら逃げ出して行く。


 今度は何? 肌色の……おじさん?!


 そう、その小人たちは、バーコード頭に中年太り、メガネをかけたのも居る、小さなおじさんたちだった。

 しかも肌色、素っ裸だ!

 おい、勘弁してくれ、私は乙女だぞ。


 肌色の小さいおじさんたちは、妖精たちが入れ替えていた本を、えっちらおっちらと運び、別の本棚に入れていく。

 いたずらでもしているのか? うーん、ちょっとイラっとする。


 私は、髪留めのゴムを指に巻き、一人の小さいおじさんに狙いを定める。

 パチン! 軽い音を立てて見事に命中すると。

「ひゃん」

 なんておじさんらしからぬ声を上げ、本棚の隙間におじさんたちは逃げて行った。


「何だったのよ」

 小声でつぶやき席を立って、妖精さんと小さいおじさんたちが、何やらやっていた本棚に近づいてみる。


 確か妖精さんや小さいおじさんたちが、本を入れ替えていたはずなのに、ちゃんとその棚の種類に分けられている。

 えーと、これはあれか、妖精さんが悪戯して本を入れ替えたのを、小さいおじさんたちが元に戻していたと……。

 あちゃー、やっちゃったか。


 私は、小さいおじさんたちの消えた、本棚の隙間に向い。

「ごめんなさい、おじさんたちが悪戯してるのかと思った」

 謝罪をして、図書館を出ることにした。


 図書館で暮らしてる、妖精と小さいおじさんか……やっぱ夢見てたのかな?

 そう思い、振り返ると本棚に隠れるようにして、こちらに手を振っている小さいおじさんたちが見えた。

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図書館暮らし。 大福がちゃ丸。 @gatyamaru

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