死に場所を求めて、車を走らせる男性が主人公。日常世界で、主人公は車を運転することが救いだった。しかし今夜は違う。自殺のために車をあてもなく走らせる。そんな主人公は、ふと、自分が何故自殺を考えるまでになったのかと思い始める。どう考えても、主人公の両親の離婚が原因に思えてくる。
主人公が幼い頃、離別した両親。よく顔も覚えていなかった。一方で、父が煙草を吸っていた記憶が、鮮明に呼び起こされる。煙草を吸う父に駆け寄る幼い自分の頭を、父がそっと撫でてくれた。
自殺に向けて、生前整理もしたし、心残りもなくしてきた。しかしここで、心残りが一つだけあることに気付く。それは――。
コンビニで父と同じ銘柄の煙草を探す。
そして……。
主人公は埃だらけの記憶の抽斗から、何を得たのか?
無味乾燥な日々から、いかにして主人公が抜け出すのか?
始まりが主人公の自殺についての想いから始まるので、重い印象を受けたが、最後には希望が見いだせるので、拝読できて良かったと思える作品でした。
是非、御一読下さい。